「3・11」でも使えたPHSが歴史に幕…「悲しすぎる」のツイートが大反響の投稿者に「ピッチ愛」を聞いた

北村 泰介 北村 泰介

 1995年の誕生から「ピッチ」と称され、安価な基本料金と通話料で当時の若者らに支持されたモバイル通信サービス「PHS」。今年1月31日に停波となり、25年間に渡る歴史に終止符を打った。最後の日を前に、自身が所有する機器の画像と惜別ツイートで大反響を呼んだユーザーの「けろ山(@keloyama)」さんに「PHS愛」をうかがった。

お別れを告げるメールに「悲しすぎる」

 けろ山さんは1月29日に「先ほど、PHSからお別れを告げるメールが届いた。 あまりにも悲しすぎる」と投稿。ピンクの機器画面に「あと2日で、PHS開始から25年の歴史が終了いたします」「長年のご利用に心より感謝いたします。ありがとうございました」という別れの言葉が表示された画像も添付した。この投稿に対して2月1日までに7万3000件のリツイート、32万3000件の「いいね」が付いた。

 けろ山さんは都内に住む50代の男性会社員。「和モノ」(昭和歌謡やGS等)のレコードを回すDJとしても活動している。「最後の日」となった1月31日の投稿では、今も所有する20台以上の歴代所有PHS、初めて買った「たまぴっち」の箱などを並べ、井上順(当時・順之)の「お世話になりました」、水前寺清子の「ありがとうの歌」などのシングル盤ジャケットを背後に置き、感謝を込めた曲名と共に「余命一日となったPHSたち。お世話になりました。ありがとう」と労をねぎらった。

初めてのPHSは『たまぴっち』

 同氏が初めてPHSを使用したのは1997年。当サイトの取材に対し、「最初は、たまごっち機能がある『たまぴっち』を購入しました。当時、たまごっちが大流行していて手に入らなかったのですが、バイトの学生が『たまぴっち』を買えばPHSとたまごっちが両方使えてお得ですよと言うので、たまごっちやりたさに手を出しました。当時、携帯の電波が脳に悪影響があるという話があったので、身体のことを考えて、たまぴっちユーザーを放棄した後もPHSを使い続けました。携帯は、昨年のコロナ禍でテレワークを強いられた際にスマホが必須と言うことで渋々購入しました」と自身のPHS史を振り返った。

 今回の投稿に登場し、「最後のパートナー」となったピンク色の機種について、けろ山さんは「量産型の『ストラップフォン2』です。初期型『ストラップフォン』は買い損ねました」と説明。さらに「もう一台使用していたのはKES社の『WILLCOM 9』です。2月1日の午前3時まで、この2台のPHSで1人通話をしていました」という。

 また、31日の投稿画像に写っていた「歴代所有PHS」については「8割くらいが先述のW-SIM対応機です。壊れて使えないものも結構あります。探しても見つけられず写ってないものは、4機種くらいはあるはずです」と説明。今後について、同氏は「W-SIM対応機はいつでも使えると思って持っていたのですが、今後は何台か残して廃棄するかもしれません。でも捨てられない性分なので…どうなるか?でも、ネットインデックス社の『nico.(ニコ)』(PHS音声端末) は目覚まし時計としても優秀なので今までも、そして、これからも頼もしい目覚ましとして使っていくつもりです」と再活用を思い描いた。

 携帯、スマホと時代が移り変わる中、最後の日まで一貫して使い続けたPHSの魅力とは。けろ山さんは「移動体通信界で傍流を歩みながらも革新的な商品を送り続けたWillcom社の姿勢はもっと再評価されるべきだと思います。スティーブ・ジョブズは、iPhoneより早かった、なんちゃってスマホ『W-ZERO3(WS003SH)』を初めて見た時、きっと地団駄を踏んだと思います」と指摘する。

あの3・11でもPHSは使えた

 一方、リプ欄のコメントで目を引いたのは、2011年の東日本大震災当時にPHSに助けられたという証言だ。

 「3・11の震災のあの日、みんな携帯が使えなくなって公衆電話に列が出来てたけど、PHS だった私の携帯は普通に使えていて家にいた家族とも連絡が取れた。『PHS凄い』と思ったあの日」「私達家族もPHSユーザーで、3・11震災当日にも通信制限なしで互いに所在確認できたため、ひとまず安心して過ごせた事に感謝していました」。感謝の言葉が並んだ。

 けろ山さんもその点に注目する。「ツイートのリプライで、『東日本大震災時にPHSは通話ができて助かった』という趣旨の書き込みが多くありました。私も当時、地方の母や親戚を安心させることができて良かったと言う記憶が蘇りました。さすが災害時に強いPHSです!!」。くしくも震災から10年の節目に役割を終えたPHS。90年代からの一途な愛用者たちの心の中で、かけがえのない記憶と共に生き続けていく。

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