昭和の上方女優・浪花千栄子(1907~73年)をモデルにしたNHKの連続テレビ小説「おちょやん」。作中では、戦前の大阪の劇場街や京都の映画撮影の風景が描かれています。そんな戦前の劇場街や無声映画の時代の雰囲気をたどることができる展示が京都市で催されています。
京都市中京区のおもちゃ映画ミュージアムで行われている「弁士・片岡一郎コレクション展『活動写真弁史の世界展―日本映画興行の始まり』」です。活動写真弁士として活躍する片岡一郎さん(43)=東京都練馬区=が収集した絵はがきの拡大コピーや、当時の映画のパンフレット、俳優のブロマイドなど約70点が並んでいます。
会場で目を引くのは、やはり各地の劇場街の様子。北海道小樽市や仙台市、広島市など全国の劇場街を捉えた絵はがきのコピーが展示されています。
「おちょやん」には、大阪・道頓堀の劇場や芝居茶屋などが登場しました。ミュージアムで展示されている写真は道頓堀から少し南の千日前が被写体です。千日前にあった「楽天地」という劇場を撮影した絵はがきのコピーには「大けな建物が楽天地だんね。中へはいるといろんな見る物が仰山(ぎょうさん)おまして一日遊べまっせ(大きな建物が楽天地です。中に入るといろいろと見るものがたくさんあって一日遊べますよ)」と大阪弁で書かれています。
多くの撮影所があった京都。展示品には京都が「大京都」と呼ばれたころの繁華街・新京極を写した1枚が展示されています。キネマ倶楽部(クラブ)という劇場や「シーホーク」という作品の看板が写っており、京都が「映画の町」としてにぎわっていた様子が分かります。
そして、東京の劇場街といえば浅草。今でも、浅草演芸ホールや東洋館などがある浅草公園六区の様子を写した絵はがきの複写が陳列されています。片岡さんによると、アニメ「鬼滅の刃」でも、この絵はがきをモチーフにしたワンシーンが使われているとか。多くののぼり旗や幕が張られ、今にも人々のざわめきが聞こえてきそうです。
展示は片岡一郎さんが「活動写真弁史」(共和国、7260円)を昨年10月に出版してことを記念して開かれています。
片岡さんは「オンライン配信など、映画のあり方が変わっていく時代に映画原初の時代を見て、新たな可能性を知ってほしい」と話しています。
劇場街や映画興行に焦点をあてた第1期は31日までです。さらに第2期「活動写真弁士の黄金時代」(2月3~28日)、第3期「トーキー時代以降・生きていた弁士」(3月3~28日)と続きます。おもちゃ映画ミュージアムは月・火曜休館。入館料は高校生以上500円、中学生300円、小学生以下無料。