新型コロナウイルスの感染拡大に伴う首都圏などへの緊急事態宣言再発令の中、飲食店に対する夜間の時短営業に加え、昼間の外食についても政府が自粛を促すなど、「食」のシーンに変化が生じ、「黙食」というワードも最近のトレンドになっている。こうした動きを踏まえ、流通アナリストの渡辺広明氏は21日、当サイトの取材に対し、コロナ禍で大きく変化する飲食店の現状と今後の打開策、コンビニエンスストアへの影響などについて解説した。
政府の担当大臣による「昼間も不要不急の外出自粛をお願いしたい。ランチはリスクが低いということではない」という発言から「ランチ自粛」という言葉が拡散し、ファミリーレストランチェーン「サイゼリヤ」社長が会見で「ランチがどうのこうのと言われました。ふざけんなよ」と怒りを表したことも報じられた。
「ランチはダメ」というイメージが流布される一方、「複数の人が食事のためにマスクを外して食べながら会話し、その際に飛沫を飛ばすのが問題なわけで、1人で黙って食べていれば問題ない」という指摘もある。俳優・松重豊が演じる主人公が仕事の合間にぶらっと単身で立ち寄った飲食店で黙々と食べながら心の中で食レポをするテレビ東京系ドラマ「孤独のグルメ」の外食スタイルが改めて注目され、「黙食」がこの時代のキーワードになった。今後、外食形態はどう変わるのか。
渡辺氏は「1人で食べる『個食』は、朝外食(ハンバーガー、牛丼、ラーメン、焼肉など)という新しい食シーンとして定着していきそうです。コロナ禍で、夜型の生活から朝型に変わった人も多く、朝外食が日常化していくチャンスでもある。『黙食』というワードがSNSで話題になるなど、外食の生き残りをかけた対応とともに、単身世帯が高齢者を中心増える中、外食での個食の光景は日常の光景になりつつある」と指摘した。
さらに、渡辺氏は「テイクアウトの充実は必須。今まではランチや夜ご飯の1人用の対応が多かったが、ファミリーや家飲み用の大人数のテイクアウトメニューが商品単価も上がるため、生き残り策になると思います」と付け加えた。同氏は「休日の夕方、近所の『はま寿司』で持ち帰りを頼んだら、レーンを一つ潰し、持ち帰りお渡しゾーンになっており、ネット注文したお客さまが列をなしていました」と実例を挙げた。
また、緊急事態宣言の再発令に伴い、「白木屋」や「魚民」といった居酒屋などを運営する外食大手チェーン「モンテローザ」が都内の337店舗のうち61店舗の閉店を発表。飲食店の未来について、渡辺氏は「アフターコロナでも、行動変容してしまった顧客が完全に戻ってくる事はないと考えられ、酔客以外のファミリー層を取り込むべく、メニュー変更や業態変更を検討する必要が出てきそうです」と、将来的にコロナが終息しても、その中で変わった顧客の行動は元に戻らないと予測した。
一方で、外食自粛やテレワークのために飲食店を訪れる人が減少する中、コンビエンスストアの存在がクローズアップされている。
その影響について、渡辺氏は「在宅勤務で人の動きが減少して中食需要が落ち込んでいるものの、外食の時短営業で、宅飲みが増えているので、コンビニでのアルコールやおつまみの販売は好調。住宅立地店舗において、個店での品揃えの拡充が行われている。また、外食での贅沢ができなくなっているので、高級デザートも販売好調です。報道によると、セブン-イレブンは2月までに6000店でそれらのカテゴリーのレイアウト変更を進める計画です」と説明した。