新型コロナウイルスの影響であらゆる文化活動の自粛、店舗の休業など、多くの活動が制限されている。そんな中、あえて「休業」という形を取らず、店内の装いを変えて「おひとり様カフェ」として営業を続けているカフェがある。京都市中京区にある、「カフェ・モンタージュ」だ。
15席のキャパシティの店内に設けられているのは、たった7席。もちろん席と席の間は大幅に空けられている。入店後の私語は厳禁。机の上には「入店後はすぐに手を洗ってください」と書かれた札が置かれている。
通常はカフェ営業、夜は小規模のクラシックコンサートを頻繁に開催し、「京都の街中の小さな劇場」を謳う同店。普段ならば飲食を楽しむ人や、夜はクラシック音楽好きが多く集まる。
しかし2月末には全国的に多くのイベントが自粛され始め、同店でも3月に予定していた半分以上の公演が中止。カフェ営業は続行していたものの、「不特定多数の人間が会話する空間」を維持することに、徐々に危機感を募らせていったという。
そんな中、3月半ばに「私語厳禁」の公演を実施。店内に入れば、受付中や開演時、終演後にも、一切口を開かない。来場客も少ないため、人と人の間に距離もある。「こんな状況下でも」と実施したこのイベントは、「安心して音楽を楽しめた」と演奏者からも来場客からも好評だったという。
「私語はしないというある種の『積極的な参加』のもと、一つの公演を作り上げることができた経験と、クラシックコンサートのあり方が、おひとり様カフェへのアイデアにつながりました」(オーナー・高田伸也さん)
クラシックの演奏会は、ウイルスに関わらずとても静かなもの。おしゃべりはもちろん、咳払いやパンフレットの紙をめくる音すら立てずに、目の前の音楽に集中する。そんな空間を、聴衆は「暗黙のルール」として意図的に作り出しているともいえる。
「演奏中は話さない、という聴衆の静かな意思表示が、その空間にいる人同士のつながりを強くしているんです。そこで『話さない』『接しない』という行為は、ネガティブなものではない。それをこの店でも体現したかったんです」
そして生まれたのが「おひとり様カフェ」だ。実際に来店する客の数は、それほど多くはない。それでも、「店を開けておくことに意味がある」と高田さん。
「今は店に来てください、とはっきりと言えるような状況ではありませんし、この営業がいつまで続くのかも分かりません。とりあえず今は『行動を控える』ことを共通認識として、手を取り合っていかないといけない。それを楽しく、肯定的なものにしたい、という思いから営業を続けていきます」
新型コロナウイルスの影響による自粛生活には、終わりが見えない。そんな中で高田さんが下した決断は、「一切やめる」という白黒のはっきりしたものではなく、長期的な戦いといかに付き合っていくかを見据えた選択だった。
■店舗情報
カフェ・モンタージュ
住所:京都市中京区五丁目 239-1
HP: https://www.cafe-montage.com
【おひとり様カフェ】
・定休日 金曜日
・営業時間 13時 - 19時 (18時L.O.)
・座席数 7席