新型コロナウイルス感染拡大により、非正規雇用の割合の高いひとり親家庭に経済的影響がみられますが、子どもの心や身体にも影響が出ているようです。食品を無料で配付する事業を行っているNPO法人が行った調査では、食事の量や回数が用意できず、子どもの体重が8キロ減ってしまったり、子どもが事あるごとに「お金かかってんのにごめんな」と話したりといったケースが報告されています。
ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を運営する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(東京都大田区)が、サービスを利用者に対して「新型コロナウイルスの影響が出始める前との収入や食事の変化」継続して行っている調査の結果を公表しました。調査は昨年5月・9月・12月に行われ、12月の調査の有効回答数は東京592人、 大阪266人でした。
収入への影響…6割以上のひとり親家庭の収入が減った状態のまま
直近で受け取った収入について、東京については5月・9月の結果と比較、大阪は直近と比較した結果を聞きました。
12月はわずかながら「失業したが新たな仕事に就いた」などの回答もありましたが、依然として6割以上のひとり親家庭の収入が減った状態のままでした。東京近郊と大阪市での地域差はさほど無いように思われます。
収入が減った理由については、「勤務時間の短縮・ボーナスカット」等が最も多く、続いて失業など全く仕事が無い状態の人が1割以上を占めました。「その他」では、心身の健康状態が悪化し働けなくなっているという回答が目立ちました。
収入に関して同法人は「新型コロナウイルスの感染拡大の第三波に伴う外出自粛、GOTOトラベルの一時停止による家計への影響は今後出てくるものと思われ、引き続き注意が必要」としています。
また、収入に関しては、下記のような具体的なコメントが寄せられています。
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▽月給10万以上あったものが、7万〜8万程度になってしまった。
▽失業後、面接を受け続けていますが、20社以上落ちました。精神的にもダメージを受け、鬱気味ですが諦めずに探している状態です。
▽子供が風邪で熱をだして休みをとったら、「コロナかもしれないから会社にこないでほしい」と一方的に派遣契約が途中で切られいきなり無職になりました。
▽子供4人育ててきて ひどい時はガスや電気 水道まで止まった事がありましたがなんとか普通に生活できるようになってきたとこで 収入が減ってなかなか厳しい状態です。
▽子供がお金をかなり気にするようになり、うちにはまだお金はあるの?クリスマスプレゼントは欲しいものがないからいらない。ご飯ももっと少なくていいよ!お菓子もお金ないからいらないと、言うようになりました。親としては本当に悲しくなりますし、悔しいし、情け無いしで子供の前で泣いてしまう事が多くなりました。
食事への影響…親を中心に量や回数を減らし、子どもにも影響が
食事に関しても引き続き、親を中心に量や回数を減らし、子どもにも一部影響が及んでいる状態が続いています。「一度も食事ができない日があった」という回答する人も、東京・大阪どちらにも見られました。また、食事回数が3回でも、お昼はインスタントラーメンが増えた、肉や魚を買わなくなった等、食事の質が落ちているという回答も見られました。
同法人は「学校等が休みの期間中に食事の回数が3回から2回に減る子どもも2割程度いると思われ、冬休みの栄養不足が懸念されます。また、クリスマスやお正月など、季節や行事、文化を「食」を通して楽しむという子ども時代の経験が奪われてしまうことも心配です」と説明していました。
食事に関しては、下記のような具体的なコメントが寄せられています。
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・仕事はないのにお腹は空く。中学生の息子は170センチで55キロあったのが47キロとかまで落ちてしまい、自分が死んだときの保険の計算までしてしまいました。
・毎朝食パン一枚で学校に送り出して申し訳ない気持ちでいっぱい。
・食事は一日に2回食べられたら良い方。
子どもへの影響…ストレスから健康面に問題が
「コロナ禍による社会の変化や生活の変化で、お子さんの様子に影響(普段の言動、表情、生活など)がありますか?」と聞いたところ、東京・大阪どちらの地域でも4割に「影響がある」という回答が見られ、そのなかではストレスからくる子どもの健康への影響が特に多くみられました。
寄せられた声を見ると、チック症、抜毛症、痙攣、不安障害、統合失調症等、実際に身体へ影響が出ていたり、友達との関係が悪化、家で暴言が増えた、進学を諦めるようになりました…といった内容があったといいます。同法人は「子どもの心と身体、そして将来に取り返しのつかなくなるような影響が起き始めていると言わざるを得ない状況です」と説明しています。
具体的には下記のような内容が寄せられています。
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・授業が詰め込みになっているようで、本人の勉強が追いついていない。また先生が厳しくなり精神的なものから頻尿になっている。
・事あるごとに「お金かかってんのにごめんな」とか「高い?安い?」と聞いてきたりする。
・私は至って普段と変わらず接しているのに「ママ何か悲しいこと考えてない?」とか「ママがいなくなったら生きていかれへん」「お手伝いさせて」と言ってくれ「どうしたん?」って聞くと「できるだけママの力にならないとママが早く死んじゃうから」と言う。「家族」という言葉をよく口にするようになった。一時期チック症状みたいのもみられた
・コロナが流行ってから生活リズムが狂って、中1の息子が起立調節障害になり、めまい、動悸、不安障害になり新学期から学校に行けなくなり、今は一日一時間しか学校に行けてません。
・家が狭いので、兄弟喧嘩が絶えない。上の子が下の子にストレスをぶつけ、下の子が抜毛症になった。
・表情が乏しくなり、以前のやる気が見られなくなった。
限界を迎えているひとり親
調査をふまえて、同法人は下記のように解説しています。
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新型コロナウイルスの影響で、ひとり親がその日を生きるために続けてきた仕事から離れざるを得ない状況が多くみられます。ただでさえ就職に不利と言われているひとり親が、今の社会状況で仕事を見つけるのは本当に難しいことです。
ひとり親家庭には悲しいことに、「必死で働けば何とかなるだろう」といった批判が付いて回ります。たしかに、心身ともに親子が健康ならば、必死で働き子どもを育てることは可能かもしれません。
しかしそこに、「心または身体の病気」「障害」「介護」「子どもの障害や病気」「誰かの借金の返済」などひとつ、または複数の要素が追加されたらどうでしょうか。乳幼児がいて実家に頼れなかったり、子どもが4人もいる場合はどうでしょうか。ひとり親に限らず、人が困窮状態に陥るのは、複合したいくつかの要素が重なる場合が多いと言われています。そこへ「新型コロナ」が加わったら、ただでさえ困難を強いられている家庭は、金銭的にも精神的にも限界を迎え、その影響は子どもたちに及びます。
2人にひとりが相対的貧困と言われるひとり親家庭の問題は、「誰かが悪い」で済むような問題ではなく、社会の問題です。