「八戸に市営地下鉄が!?」…新年早々、青森の新聞社の濃すぎる“妄想記事”にツイ民たち初笑い 

竹内 章 竹内 章

市営地下鉄を妄想してみた-。2021年1月1日、青森県の新聞社の特集記事が、SNSをざわつかせました。エッジが効いた見出しとともに、存在しない路線図や各線の停車駅案内、詳細情報を見開きで真剣に展開。合成写真も駆使して作り込んだ自由すぎる紙面に、「素晴らしい妄想です」「朝から爆笑しましたw」「初笑いありがとうございます」などと喝采のツイートがやみません。年が明けてもしんどいニュースがあふれるご時世ですが、デーリー東北新聞社さん、グッジョブです! 

〈2XXX年、八戸市は、八戸沖に眠る未知の海洋エネルギー資源の発見に沸いていた〉の書き出しで始まる新年号第2分冊の企画「八戸市営地下鉄を妄想してみた」。ラインカラーで塗り分けた種差線、三八城線、鮫線、中央線が市内を結ぶ路線図横には〈1.2sat/中央線、はじまる/もっと便利に〉という開通前日の筆者の高揚感を込めたかのような見出しも。その下には、小さな文字で〈※妄想です〉のお断りもあります。

デーリー東北新聞社は八戸市に本社を置き、青森県東部から岩手県北部をエリアとする新聞社です。担当したのは記者の松橋広幸さん(32)。東日本大震災発生後の2011年4月に入社し、写真部などを経て現在は報道部。司法・警察担当という松橋さんに聞きました。 

―この大作、すぐにできる企画ではないと感じました。

「2年ほど前、八戸市内の路線バスマップを見ていたときに、これが鉄道だったら…と空想したのがきっかけです。新年号の準備に取りかかる昨秋、だめもとでデスクに相談したら『いいじゃん』『やれやれ』とGOサインが出ました」

―鉄道愛が随所に。

「実家が青森駅の車両基地の近くにあり、鉄道を見て育ちました。今回のような妄想地図を描いては一人で悦に入るという変わった子どもでした。学生時代は東急東横線の日吉駅(横浜市)や元住吉駅(川崎市)、武蔵小杉駅(同)で『押し屋』や駅アナウンスのアルバイトをしていました。コロナ前は、東京に新しい路線が開通したり、駅がリニューアルされたりした際は、必ず乗りに行っていました」

―ラインカラーや運転間隔など路線の詳細情報が濃い、です。

「中央線の青は、八戸市の市章の色からです。沿線にある神社の鳥居から三八城線は朱、鮫線は市民の花の菊から黄、種差線は終点の海岸にある芝生広場から緑にしました。八戸メトロのマークは一見、Mに見えますが、『八』『ハ』と『ト』『ヘ』の文字の組み合わせや市民の鳥であるウミネコが羽ばたいている姿です。紙面のデザイン担当者が考えてくれました」

―鉄道以上に地元への思いが伝わってきました。

「青森県は日本海側の津軽地方と太平洋側の南部地方で風習や文化、方言が異なります。津軽生まれの私はどちらかといえば南部地方には愛着が薄かったのですが、東日本大震災後の4月に入社し、八戸が復旧・復興していく様子を見てきました。臨海地区の工場群、豊かな漁場にも恵まれた八戸は底力のある街だと感じています。遠い未来かもしれませんが、地下鉄は『あり得ない』話ではないと思います!」

「今回の企画に少しでも興味を持ってくださった方には、住んでいる街をいま一度見つめ直す機会として、鉄道路線や新道路網の妄想をしてみてほしいなあと思います。いろいろ気付くところがあるのではないでしょうか」

デーリー東北新聞社の遊び心ある紙面は、妄想地下鉄だけではありませんでした。2018年4月1日の紙面では「うごきだす新八戸タワー/そびえ立つ世界最高888メートル」「2030年青森五輪案」と大スクープを放ち、日曜の朝から読者を驚かました。もちろんエイプリルフール企画で、見出しのあちこにち「うそ」「USO」がありますが、SNS上で「考えるだけでわくわくする」「非現実的な話だけど、実現したら素敵」と反響を呼びました。

「エイプリルフール新聞のように遊び心あふれる紙面を作る自由な社風なのだと思います」と編集局の今井崇雄・報道部長は話します。妄想地下鉄は記者の趣味色が強く、路線図やロゴを作成する上で参考にした東京メトロや大阪メトロに怒られる恐れもあるのでこっそり掲載したのに、なぜか隣の文化部がつぶやいてバズってしまったそうです。

「弊社はよくデイリースポーツの東北支社と勘違いされます。今度、題字をとっかえっこして『デイリー東北』と『デーリースポーツ』を発行してみませんか?」

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