LiLiCoや鶴見辰吾も絶賛の映画『レディ・トゥ・レディ』…SNSでジワジワ話題、令和の『Shall we ダンス?』 

石井 隼人 石井 隼人
大塚千弘は約2ヶ月のダンス稽古で4キロも痩せたという。
大塚千弘は約2ヶ月のダンス稽古で4キロも痩せたという。

リード&フォローの概念を人間関係に置き換えて

女性同士の競技ダンスペアを通した人間ドラマという主軸の周囲には、「パワハラ」「セクハラ」「忖度」という今日的な社会問題も散りばめられる。女性同士ペアをどう着地させるのかと思いきや、“自分らしく生きるには?”という性別を超えた個人としての問いに集約。間口を広くするバランス感覚がいい。

「私たちは好きだから踊っている。ただそれだけ」という真子と一華の爽やかな笑顔も胸を打つ。競技ダンスのリード&フォローの概念を人間関係に置き換えて、友人や夫、妻、家族とのあり方、そして自分自身の生き方を改めて見つめたくなる。深みのある丁寧な作りには好感が持てる。

W主演の大塚千弘と内田慈のアンサンブルも素晴らしい。大塚は専業主婦の実母の姿を役作りのヒントに、サンバイザー&ママチャリで主婦の日常感を取り入れて、どこかにいそうなリアルな主婦像を創造。真子は漫才でいうところの天然ボケの担当だが、大塚のリアクションはナチュラルにコミカルで、コメディエンヌとしての才能を開花させている。

そんな動の大塚とは一転、名バイプレイヤーとして知られる内田はきめ細かい表現力で一華を立体化する。中でもダンスの練習中にふと真子に感謝を告げるシーンでの言葉選びとトーンは、2人が重ねてきた日々と深い絆を感じさせるベストアクト。撮影を重ねる中で真子と一華の関係性を掴んだ内田が、現場で急遽変更したという。内田は“その関係性でそのシチュエーションだったらそういう言い方をするよね”という納得の演技を至るところで見せてくれる。過多でもなく過小でもない、感情の表出が抜群に上手い。

若手人気俳優やお客を呼べるスター俳優は出演していないかもしれないが、確かな実力を備えた俳優陣が多数出演。「わたし空気読めないんで」が口癖の女性AD(清水葉月)、ムード歌謡歌手兼ダンスコーチ(木下ほうか)、責任転嫁系プロデューサー(新納慎也)、真子と一華の心に火をつけるお嬢様ダンサー(朝見心)など脇役にもしっかりと個性的な味付けが施されており、誰一人キャラクターとしてのかぶりがない。だから見ていて飽きない。

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