ソフトウェアをインストールするだけで、パソコンやスマホでゲームを楽しめる便利な時代になった。その裏ではゲームをつくる人、売る人たちで構成されるゲーム業界がある。ゲームアプリ販売に携わるB氏に聞く。
スマホは「アプリ」、パソコンは「ソフトウェア」。でも意味は同じ。
「唐突ですが『アプリ』って、何を略した言葉か分かりますか?」
こう問われて、咄嗟に「アプリケーションソフト」と出てくるだろうか。
「アプリケーションソフト」はOS(Operating System:基本ソフト)上で起動するソフトウェアのことで、ゲームアプリの他にも、音楽を再生したりメールの送受信をしたりする「アプリ」は日常生活に欠かせないものになっている。また地図やGPSでナビゲーションをしてくれたり音声で入力したりできるのも、そういう機能をもつアプリのおかげなのだ。
「アプリは携帯電話やスマホにインストールして使うイメージが強いですが、パソコンのソフトウェアもアプリケーションソフトです。意味は同じなのにパソコンは『ソフト』、携帯電話やスマホは『アプリ』と、なぜか違う言葉で分けられていますね」
では、よく耳にする「パッケージ」ってなんだろう。
「狭い意味では、市販されているソフトウェアのことです。でも、ソフトの販売方法は、大きく分けて2つあるでしょう? ダウンロード販売されるソフトは『パッケージ』とはいいません」
「パッケージ」は、ソフトウェアを記録して販売されるCD、DVD、USBメモリー、SDカードなど記憶媒体のことで、ソフトの中身を「コンテンツ」という。
コンテンツを「移植」する!?
家庭用ゲーム機のソフトは基本的に、開発したメーカーのゲーム機だけでプレイでできる仕様になっている。ゲーム機とソフトをセットで売るための販売戦略だ。
「それを別メーカーのゲーム機でもプレイできるようにプログラムを書き換えることや、もともとアミューズメント施設で据置き型のゲーム機用に開発されたソフトを、家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機でもプレイできるように改変することを『移植』といいます」
誰が最初にいいだしたのか、「移植」とはなかなか上手い表現だ。
そのゲームソフトをつくる人を『ゲームクリエイター』というが、担当する仕事によって呼び方がさらに細かく分けられるという。
・企画を立てる……プランナー
・キャラクターや背景をつくる……デザイナー
・音楽をつくる……サウンドクリエイター
・ゲームのプログラムをつくる……プログラマー
これらを総称して「ゲームクリエイター」と呼んでいる。
ゲームビジネスは「売り切り型ビジネス」と「運営ビジネス」がある。
「ゲームビジネスには、大きく2つのタイプがあります」
ひとつは、「売り切り型ビジネス」といって、メーカーが小売店を通してゲーム機を売った後、新しく開発したソフトウェアを販売して収益を得るタイプ。
もうひとつは「運営ビジネス」といって、ソフトを売った後、課金したユーザーに有料でアップデートを提供したり、ゲーム内で有料のイベントを開催したりして収益を得るタイプ。
「運営ビジネスでは、はじめは『フリーミアム』で利用者を集めることも、よく行われます」
「フリーミアム」とは、無料を意味する「フリー(Free)」と割増を意味する「プレミアム(Premium)」の合成語だ。ゲームソフトを無料でダウンロードしてもらい、あるレベルまではお試しでプレイできるが、さらに高度な機能を使うには課金を求められるパターンだ。
「ゲームに魅力のあることが前提ですが、やりはじめたら最後までやりたくなるのが人情ですから、運営ビジネスは比較的安定した収益が見込めるといわれています」
売り上げを表す用語もある。
「メーカーさんによって意味合いが微妙に異なる場合があるのですが、『アープ』といって、主としてユーザー1人あたりの月間平均単価を表します」
ちなみに課金ユーザーと非課金ユーザーを含む場合は「ARPU(Average Revenue Per User)」、課金ユーザーのみの売り上げを表す場合は「ARPPU(Average Revenue Per Paid User)」と表記される。読み方は、どちらも「アープ」である。