バイクの販売が伸び悩むなか、今年登場して大人気のCT125…ようやくハンターカブが受け入れられる時代に?

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 昭和の終わり頃から平成の初めにかけて、空前のバイクブームがありました。各メーカーは毎年、いや半年ごとに新しいモデルを発表し、街は若いライダーであふれ、それまで珍しかった女性ライダーも当たり前にみられるようになりました。

 ピークの1983年、バイク販売台数はおよそ328万5千台。しかしブームが去るとバイク市場は徐々に衰退し、2019年の販売台数は36万2千台と最盛期の1/10近くまで減ってしまいました。

 そんななか、今年6月の発売以来売れ続けているモデルがあります。2019年秋に発表されると先行予約が相次ぎ、発売された時点ですでに半年以上待ちのバックオーダーを抱え、いま現在は予約受付をストップしているという大人気ぶりのバイク。それはホンダのCT125です。

このバイクのルーツをたどると

 このバイクのルーツをたどると、1961年に発売されたハンターカブ55と呼ばれるモデルにたどり着きます。もともとはアメリカ向けの輸出仕様モデルCA105Hというバイクを国内用にアレンジしたものです。

 OHVエンジンのスーパーカブ55をベースに、オフロード用のタイヤなどで足回りを固め、跳ね上がったアップマフラーが特徴的でした。その名の通り、ハンターなど山へ分け入る人向けのカブです。しかし当時の国内ではあまり売れなかったのか、ごく短期間の販売だったようです。

 カブがOHVエンジンから新しいOHCエンジンに変わって、1968年にはハンターカブの後継ともいえるCT50が発売されました。北米向けのCT90を国内向けに50ccにしたものです。外観は「レッグシールドを無くし、アップハンドル、アップマフラーにしたスーパーカブ」といった印象ですが、オフロード走行を想定して副変速機が装備されていました。これは通常の三速ロータリーミッションとは別に、レバーでハイとローを切り替えることができる機構で、山道などでは低速で強い力が出せるようになっていました。ハイで三速、ローで三速それぞれ使えるということです。

 輸出用のCT90はその後1980年に排気量を大きくしたCT110にモデルチェンジ、翌1981年には国内販売もされました。しかしこの頃、空前のバイクブームに沸いていた日本では、若者の視線はよりハイパワーなロードバイクに集まっていて、CT110はあまり注目されませんでした。それでこのモデルも2年ほどしか国内では販売されませんでした。

 CT110はアメリカでは1986年まで、郵便配達用に正式採用されたオーストラリアでは2012年まで販売され続けました。この頃のモデルは逆輸入されて、日本でも少なくない数がいまも走っているようです。

2012年、CC110登場。そしてCT125へ

 2012年にカブのフルモデルチェンジがあって、その翌年にスポーツタイプのCC110クロスカブが発売されます。続いて2017年に再びカブがフルモデルチェンジすると、クロスカブも2018年には新型になりました。また同時に原付一種のCC50も登場しました。

 そして2019年の東京モーターショーで、C125タイプのカブをベースにしたCT125が発表されました。1980年代のCT110に寄せたスタイルとカラーリングに、新しい125ccのエンジン。プロトタイプでしたが、これはもうほぼ確実にこのままの姿で市販されるだろうという完成度で、多くのファンの心を掴みました。それからは発売はいつになるのか、2020年の3月らしい、いやコロナでちょっと延期になりそうだ、などと雑誌でもウェブでも盛り上がるなか、2020年6月に販売が開始されました。

 当然のようにその時点で既に予約がいっぱいで、いま予約しても納車は半年以上先、という先に書いたような状態になったのですね。

CT125こそ、いま求められているバイクなのかもしれない

 ホンダのカブというとこれまでに一億台以上も生産された、日本を、いや世界を代表するといってもいいビジネスバイクです。手軽さ、乗りやすさ、頑丈さ、修理のしやすさ、そして驚異の低燃費で、アジアをはじめとする世界中で活躍しています。特に東南アジアなどでは「ホンダ」がバイクの一般名詞になるほど。そんな万能の道具ともいえるカブに、砂利道や山道の未舗装路での走破性を考慮したタイヤやサスペンションなど、オフロード向けの装備を施したワイルドなバージョン。

 かつてのCT110を懐かしむ人々はもちろん、いま静かな広がりを見せている一人キャンプなど、アウトドアライフを楽しむための足として。また、実際にキャンプはしないけどなんとなく憧れている、という層にとっても「アウトドアの雰囲気をまとったシティ・コミューター」として。CT125は確実にいまのニーズに応え、老若男女問わず心を掴んでいるのではないでしょうか。

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