日本に住んでてわざわざ外車なんて…?
「世界に誇る国産車があるのに、なぜ」と、外国車に乗るとそういう声を聞くことがよくあります。かつてまだ国産車の品質がそれほど高くなかった時代を知る人たちの間には「外車=お金持ち」というイメージがあって、未だ贅沢品という見方もあるのかもしれません。
そんななか、フランスのルノーが1997年に発表し、2002年から日本でも販売を開始した「ルノー・カングー」は、以来20年近くにわたって好調に売れ続けています。
元々は1960年代に商用車として開発されたものが改良、発展を続けてきたモデルで、天井の高い開放的な車室と使い勝手のよい大きな荷室で、ファミリーカーとして、またレジャーに好適なRV(レクリェーショナル・ビークル)として広く受け入れられたのです。
近いモデルは国産車でも、たとえばホンダのフリードなどがありますが、よりベーシックでシンプルな道具感に溢れたカングーは、独自の存在感を示したと言えるでしょう。また、フランス車ならではのポップでカジュアルなカラーバリエーションも人気を博したものと思われます。
この分野では唯一のモデルとして、いわば一人勝ちの状態でしたが、ここに来て今年の秋、同じフランスのメーカーから競合しそうなモデルが上陸します。
シトロエンのベルランゴと、プジョーのリフターです。
今秋発売のライバル、シトロエンとプジョーとは?
シトロエンは1976年にプジョーの傘下に入りましたから、この両社の自動車はいま、基本的に同じものを別ブランドで展開しているような形になっています。なので、この二つのモデルも姉妹関係にあります。
共通のプラットフォーム(シャーシやエンジンなど基本的な部分)を持ったベルランゴとリフター。一足先に実車が届いたベルランゴを先日見に行ってみました。
休日のディーラーは家族連れで賑わっていました。展示されたベルランゴを外から中から熱心にチェックする姿が見られます。国産の電動スライドドアしか知らない世代と思われる若いお父さんが、手動式の後席スライドドアのノブを押して「開かないんですけど」という微笑ましい場面も。メーカーのカタログには、家族でアウトドアを楽しむ姿と共に「マルチアクティビティ・ビークル」という文字。まさにカングーと競合していますね。
商用車にルーツを持つカングーは、現在のカングー2では同社の乗用車メガーヌのプラットフォームを採用しています。ベルランゴとリフターもEMP2と呼ばれる、プジョーの乗用車308等と共通のプラットフォームです。この点でもこの3モデルは近しいでしょう。
リフターもベルランゴも日本に導入されるのは130馬力の1.5リッターディーゼルターボで、ミッションは8速ATのものです。いまのところガソリンエンジンやMTの選択肢はありません。対してルノー・カングーは115馬力の1.2リッター、ターボ付きのガソリンエンジンです。ミッションは6速ATと6速MTが選べます。
ベースグレードの価格で比較すると、リフターが336万円、ベルランゴは312万円。カングーはATで264万7千円、MTだと254万6千円です。
この約50万円の価格差、そして「やはりマニュアル・トランスミッションでないと」という層にとっては、この先も当分カングー一択なのかもしれません。しかしその辺りに特にこだわりがなければ、より乗用車に近い快適性と真新しいスタイリングを持ったリフターやベルランゴは魅力的なのではないでしょうか。