ロシアンブルーの猫女将が宿泊客を〝おもてにゃし〟京の純和風旅館

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

 リリーが1歳くらいのころ、30代半ばの男女が泊まられたことがありました。2人はネットで知り合い、お互い猫好きだったため意気投合して遠距離で付き合い始めたんだそうです。その日、男性はプロポーズをするつもりでしたが、なかなか勇気が出ない…。そんなとき、部屋にリリーが入ってきたのがきっかけで場が和み、彼は自分の思いを彼女に伝えることができたそうです。リリーが背中を押してくれたんですね。婚姻届を出すときに、リリーが証人ということで肉球のスタンプが欲しいというので、差し上げたのを覚えています。

 リリーは、昼間は奥のこたつがある部屋で寝ていることが多いです。夕方になるとエサを食べ、そのあとはリードをつけたまま玄関前でじっと座って、チェックインされるお客さんを出迎えたり、旅館前を通る人たちを観察したりして過ごしています。「あら、リリーちゃん、今日も待っててくれたの、お利口さんね」と通勤帰りに必ずなでてくれるOLさんなどもいて、道ゆく人たちを眺めるのが好きなようです。ほんと、看板女将ですよね。

 今年4、5月は営業を自粛し、ずっと閉めてたので、リリーは「えっ、私の仕事は?」と思ってたんじゃないかな。その後は、宿泊者を1日2組に限定するなどして、なんとかやってきましたが、経営は厳しいです。GoToトラベルが始まってから、京都への人出は戻りつつありますが、こんなに海外の方が少ない京都の秋は初めてです。うちもコロナ前は海外からのお客さんが多く、外国の方は先の予約を早く入れられることが多いので、直近で予約される日本の方々はリリーに会いに来たくても、なかなか予約がとれないという状況が続いていたのですが、海外のお客さんが少ない今、「やっと予約がとれた」とリリーに会いにきてくれるファンには、とても感謝です。

 宿泊者の方々に「また京都へ遊びに行きたい」と思ってもらえるよう、美味しいお店を紹介したり観光の案内をしたりと、いろいろおもてなしをさせて頂いているんですが、リリーはただそこにいるだけで、あるいは、ひょいっとやってきてゴロンとなるだけで、お客さんの心を鷲掴みにするんです。リリーと接したことが京都の楽しい思い出のワンシーンになっている方もおられるようです。リリー、ずるい!って思うんですけど、猫女将にはかないませんわ(笑)。

【旅館名】「藤家旅館」
【住所】京都市下京区不明門通七条下ル
【電話】075-351-3894
【HP】https://fujiyaryokan.com

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