「かるたの聖地」として知られる「近江神宮」(滋賀県大津市)。その境内にある近江勧学館が、畳修繕にかかる費用をクラウドファンディングで募ったところ、わずか3日で目標額を達成しました。現在では当初目標額の2倍を上回る勢いで募金が寄せられています。さらに「応援しています」とのコメントも続々。近江勧学館の事務局長は「感無量です」と話します。
近江神宮は、小倉百人一首の冒頭の短歌を詠んだことで知られる天智天皇を祭る神社です。境内にある近江勧学館は、競技かるたの頂点を決める「名人位・クイーン位戦」や、かるた甲子園の名でも知られる「競技かるた全国高校選手権大会」の会場となっています。
また、近年では末次由紀さん原作の漫画で、広瀬すずさん主演で映画化された「ちはやふる」の舞台として一帯が登場したこともあり、訪れる人が増えていました。
近江勧学館には、畳が約400枚あります。「畳の上の格闘技」と呼ばれる競技かるたに使用されるため、畳は5年ほどたつと畳表がけば立ち、競技かるたの選手がけがをしかねない状況になります。
近江勧学館は、以前から2020年度の事業として畳の修繕を計画していました。しかし新年度早々、新型コロナウイルスの感染が拡大。館の収入の柱だった宿泊や貸し館事業に全く予約が入らない状態になりました。
しかし、聖地での競技にあこがれる選手たちのために畳の修繕だけは実現しようと、近江勧学館は初めてのクラウドファンディングに臨みました。応募できるコースは千円から3万円までの5種類を設定。3万円のコースは、近江勧学館の礼状やオリジナル百人一首に加え、「ちはやふる」の作者末次由紀さんの描き下ろしポストカードを返礼品にそろえました。
当初掲げた目標額は350万円。近江勧学館の東出太事務局長は「100万円も集まらないだろうと思っていた。畳全400枚のうち300枚ほど替えられれば十分と考え、目標額を決めました」と振り返ります。
10月30日午後にクラウドファンディングがスタート。しかし、東出さんらの予想に反し、募金はあっという間に100万円を突破。3日目には当初目標の350万円に到達しました。すでに750万円を超えています。
クラウドファンディングのサイトのコメント欄には、寄付した人から熱い思いが寄せられています。「今夢中になってる人、これからカルタに出会う人、カルタに関わる全ての人の未来に。ほんの少しですが、後押しになればと思います」「僕もここで県代表としてかるたをとりました」といったメッセージが多くあります。さらには選手の保護者とみられる人から「娘がかるたの大会などで何度もお世話になっています。思い出のたくさんあるとても大切な場所です」といった書き込みも。近江勧学館への思いがにじむ文章ばかりです。
「ものすごい勢いでご支援いただいて本当にありがたいです」と東出さんは感慨深そうに話します。畳は、近江勧学館が所有する全400枚が修繕できる見通しとなりました。さらに選手や大会関係者から要望があった、洋式トイレを温水便座に改修することも実現できそうです。
東出さんは「近江勧学館は1997年の建築で電気の配線やボイラーなど手入れしなければならない箇所が多くある。今後ともご支援いただきたいです」と話しています。
クラウドファンディングは11月30日まで。近江勧学館のホームページから申し込むことができます。