東京都在住の亀井さんは、独立している息子さんから家の前で猫風邪をひいて弱っている子猫を見つけた、と連絡を受けた。しかし、亀井さんも息子さんもすでに家で猫を飼っており、それ以上飼うことはできなかった。保護して里親を見つけようと思ったが、その後、子猫には思わぬ障がいがあることが判明した。
親猫に見捨てられた子猫
2020年8月23日、亀井さんは、門前仲町近くに住む長男から「子猫3匹と、親猫が家の目の前にいる」とLINEのメッセージを受け取った。去勢していない野良猫が多い地域だった。
メッセージには、「1匹の子猫は、他の兄弟より明らか小さく、目やにで目も塞がっている。兄弟や親とはいつも離れているみたい…どうしよう…」と続いていた。長男夫婦は、4年前に亀井さん宅の庭に突然現れた足の不自由な猫と、2年前に長男の職場の裏で保護した猫がいた。お嫁さんは妊娠中。亀井さんも3歳になる保護猫と昨夏に庭に現れた子猫がいた。亀井さんは、「里親さんが見つかるなら、それまで一時的に我が家で預かるよ」と返信した。
親猫は、弱った子猫だけ少し離れたところに置いて行ったが、運良く長男が見つけた。「きっと母猫は、障害のある子だとわかっていて、残った元気な子達だけ育てようとしたのだと思います。それは過酷な自然の世界で暮らす外猫たちの試練なのでしょう」。子猫は、ほとんど動かなかったので、簡単に捕まえることができた。
重い障がいがあるから里子に出せない
亀井さんは、ひとまず子猫を動物病院に連れて行った。生後1カ月前後 、360gの男の子だった。簡単な健康診断をしてもらったが、子猫には、その時は分からなかった障がいがあった。2、3日経つと、普通の子猫と違うということが明らかになってきた。亀井さんは預かりボランティアをしていた経験があるので、子猫の異常にすぐに気が付いた。尻尾が無く、お尻の穴がポッカリ開いて常に便が出ていた。急いで動物病院に行くと、先天性の肛門括約筋欠損だった。手術をしても一生おむつ生活だと言われ、愕然とした。
病院に行くのと並行して里親を募集、その結果、すぐに「飼いたい」という人が現れ、対面もしてもらっていたが、亀井さんは考え直した。
「里親希望者は初めて猫を飼う人ということもあり、里親さんに引き渡すのは無理だと思いました。かといって、元いた場所に戻せば、それは死を意味します。我が子として育てるしかない。母猫は、自然の中では生きていけないと知っていたのでしょう」
亀井さんは、子猫を自分の家の家族として迎えることにした。名前は、里親になると言ってくれた人がつけた「もんち」という名前にした。 もんちくんは1週間くらい元気がなく、亀井さんは「もしかして危ないかも」と思った。真菌もあったので先住猫とはしばらく完全隔離した。
SNSで悩みごとや知恵を共有
もんちくんは、便の出が悪く、苦しそうにする時 もあったが、少しずつ成長していった。亀井さんは、「心配も絶えませんが、少しずつ成長していく姿が愛しく、癒される日々」だと言う。先月、もんちくんは生後約3ヶ月になった。ケージの外で遊ぶ時は、亀井さんが手作りした布オムツをしている。
「市販の紙オムツも試しましたが、おしっこはちゃんとトイレでできるし、うんちもある程度出てしまえば、たくさん漏れることもなく、肛門に当て布をすれば大丈夫。ポリマーの入った紙おむつはゴワゴワして歩きにくそうなので、人間用のおむつカバーを参考にして作ってみました」
もんちくんは、オムツをつけたらケージの外で遊べると分かるようになり、大人しくオムツをつけさせてくれる。先住猫に体当たりするほど元気いっぱい走り回っているという。そして、亀井さんの支えになったのはSNSだ。「猫を飼っている人は、悩みや心配事があると孤独になりがちですが 、今の時代SNSなどでたくさんの人に悩みを相談したり、共感したりすることができます。とてもありがたい時代だと思います」と話す。