神奈川県の自宅で外猫にエサを与えていた男性がいた。猫たちは男性宅に居ついていたのだが、3匹の子猫が産まれた時、「レスキューしてほしい」と保護活動をしている湘にゃ庵に連絡があった。死にかけていた子猫のカイくんは、なんとか一命を取り留めた。
みんなの分まで生きられるように
神奈川県に住む男性は外猫にエサを与えていた。猫たちは敷地内に猫が住み着き、次第に数が増えていった。親子や兄弟、親戚の猫が全部で10匹くらいいて、さらに子猫が産まれた。2019年9月30日、どうにもならないと思った男性から、神奈川県で保護活動をしている湘にゃ庵に「子猫たちを保護してほしい」と連絡があった。湘にゃ庵のスタッフは翌日、3匹の子猫を保護。大人猫たちは、1カ月かけて順番にTNRしたという。
湘にゃ庵のスタッフは子猫たちをすぐに動物病院に連れて行ったが、みんな弱っていた。獣医は「生きるのは難しい。1匹だけ生き残れるかもしれない」と言ったという。その言葉通り、翌日2匹の子猫が亡くなり、1匹だけ生き残った。湘にゃ庵のスタッフは、みんなの分まで生きられるようにと、「皆生(カイセイ)」と名付けたそうだ。
猫を飼いたい瀧内さんと犬を飼いたいご主人
神奈川県に住む瀧内さんは昔から猫が大好きで、いずれ飼いたいと思っていた。ただ、2代に渡って15年近く飼っているうさぎがいたので、猫を迎えるのは怖かったという。
「うさぎと子猫が問題なく一緒に暮らしているという話をSNSで見たので、子猫なら大丈夫なんじゃないかと思ったんです。でも、夫は犬が好きで、いつか犬を飼いたいと言っていたんです。猫を飼いたいと言ってもなかなか首を縦に振ってくれませんでした」
なかば猫を飼うことはあきらめていたが、2018年の夏、瀧内さん宅にごはんを食べにくるようになった外猫がいた。秋に旅行に行く時、暑さのためあまりたくさんの置きエサができなかった。以来、外猫は姿を見せなくなった。猫を飼うことに反対していたご主人も、その時ばかりはとても残念そうだったという。
「その外猫のことが本当に好きだったので、できることなら我が家で幸せに暮らしてほしいと、外で過ごすにしても幸せになってほしいと願っていたんです。それまではペットショップで猫を買うことも考えていたのですが、この外猫との別れを経験して、外猫か保護猫を迎えようと思うようになりました」
2019年12月、Facebookに掲載された皆生くんの写真をご主人に見せると、「かわいい」と言い、初めて「猫を飼ってもいいよ」と言った。
ノックアウトされたご主人
瀧内さんは、すぐに湘にゃ庵に電話して、12月上旬、譲渡会に行った。
「生後2カ月くらいだったのですが、本当に小さくて、わあ!可愛いと思いました。産まれて間もないころから人に育てられたので、抱っこしても嫌がらず、怖がる様子もなく、堂々としていました」
皆生くんは人気者で他にも希望者がいたが、瀧内さんが選ばれた。12月中旬からトライアル開始。湘にゃ庵は、ケージの代わりになる簡易的なテントやトイレ、ベッドを貸与、ごはんももってきてくれた。
名前は皆生くんの名前から「カイ」を残して、カイラくんにした。
カイラくんは、キャリーケースから出ると、きょろきょろあたりを見回して家の中をあちらこちら探検した。遠くからうさぎのケージを見つめていたが、じりじり近寄って行った。しかし、うさぎが「何!?」と反応すると後ずさりしたという。うさぎは怒ることも警戒することもなかった。
2日後、もう一度うさぎと対面させると、カイラくんのほうが怖がって逃げた。うさぎは相変わらず「なんだ、この子」という意に介していない様子だった。
「一週間もすると二匹で追いかけっこをするようになり、遊ぶようになったんです。うさぎがケージの中にいる時も、遊ぼうよというように、カイラが手をちょいちょいと出して軽くたたいています」
瀧内さんのご主人は、カイラくんにめろめろだという。
「この子は俺が一目ぼれしたんだから、運命の子だ」と言う。高い声で「カイちゃーん」と呼んで可愛がっているそうだ。