25歳の女優が無声映画製作を計画中…でも、なぜ今、無声映画? 本人に理由を聞いた

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 映画が発明されて120年余り。フィルムはデジタル化され、今や映画は映画館だけでなく、自宅やスマートフォンでも見られるようになりました。そんな時代に、映画の原点に立ち返り、無声映画を撮影する計画を若手女優が進めています。なぜ、いま無声映画を撮るのか。主役と監督を自ら務める女優に話を聞きました。

 無声映画はサイレント映画とも呼ばれます。1920~30年代前半までの映画はすべて音声がありませんでした。そのため、「活弁」などと呼ばれる活動写真弁士が上映時にせりふを話し、映画館ではピアノなどの楽器による生演奏が行われていました。

 チャプリン監督・主演の「街の灯」や阪東妻三郎主演の「雄呂血」、小津安二郎監督の「大人の見る絵本 生れてはみたけれど」などが無声映画の代表作です。後に音声付きのトーキー映画が普及したため、無声映画は作られなくなりました。

 無声映画製作を計画しているのは、辻凪子(つじ・なぎこ)さん(25)。NHK連続テレビ小説「なつぞら」や「わろてんか」などに出演した若手女優です。

 無声映画の魅力を知ったのは学生時代。京都造形芸術大(現・京都芸術大)の映画学科で学ぶ傍ら、チャプリンやキートンの作品を見たのがきっかけといいます。「無声映画はせりふと音がなく、『絵』で感じるしかないのに、普通の映画の1千倍面白く感じました」と、無声映画との出会った時の衝撃をそう振り返ります。

 スマホで音付きの動画を見ることが当たり前の時代。改めて無声映画や弁士の魅力を知ってもらおうと、辻さんは無声映画の製作に取り組むことにしました。

 構想中の映画は約60分。世界一のコメディエンヌになることを夢見る女の子「ジャム」が主人公となるオリジナルのSFファンタジー映画「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」です。現在は脚本制作段階ですが、10月1日から1千万円を目標に製作費を募るクラウドファンディング(CF)をCFサイトのモーションギャラリーで実施しています。

 作品は2021年秋以降に公開予定。辻さんは「動きだけでコメディー作品を撮るつもりです。手作り感を楽しんでもらえれば」と意気込んでいます。

 さらに10月上旬以降、CFの告知を目的として、辻さんや活弁の大森くみこさんが、京都や神戸などで無声映画の上映を行います。
 CFの詳細や無声映画上映のスケジュールは映画「I AM JAM ピザの惑星危機一髪」のホームページに書かれています。

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