引退した「づぼらや」のふぐちょうちんは今どこに? 超有名テーマパークが獲得名乗り

杉田 康人 杉田 康人

大阪市の老舗ふぐ料理店「づぼらや」が15日、同市内にあった2店舗を閉店した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、緊急事態宣言が発令された4月7日の営業を最後に休業。一度も再開しないまま、1920年の創業以来100年続いた店の歴史に幕を閉じた。

新世界のづぼらやに吊り下げられていたふぐちょうちんは、3日未明に取り外された。大阪名物としても親しまれたが、突然の撤去に惜別の声が上がった。づぼらやの運営会社では「ふぐ屋の看板としての役割を終えました」と説明。店先には「皆様お元気で ほな!さいなら」とのメッセージが記された垂れ幕が掲げられた。

撤去後は大阪市内の倉庫に

長さ約5メートル、幅約3メートルの巨大すぎる立体看板は、実は違法だった。道路上に吊り下げられたちょうちんは、突き出し幅1メートル以内と定められた大阪市の基準に反していた。一度は同店に撤去するよう指導した大阪市も、観光客誘致の観点からずっと黙認してきた。

コロナ禍で職場を失ったふぐちょうちんの〝再就職先〟に、がぜん注目が集まる。づぼらやの運営会社によると、撤去後は大阪市内の同社倉庫に移送。厳重に保管されているという。2008年、道頓堀の飲食店「くいだおれ」の閉店にともない、同店の看板人形だった「くいだおれ太郎」の去就が耳目を集めた。太郎に知名度で劣らない日本一有名なふぐの引き取り先は?

世界の大温泉「スパワールド」が獲得名乗り

大阪市の松井一郎市長(56)は、づぼらやのふぐちょうちんについて言及。長年違法状態を黙認していたことを認めた上で、看板ではなくオブジェとしての存続を要望した。獲得に名乗りを上げたのは、同じ新世界の「スパワールド」。11カ国16種類の風呂や岩盤浴施設、プール、ホテルも備え、世界の大温泉をうたうテーマパークだ。

同施設の総支配人で、運営会社「阪神住建」の広田周取締役(62)は、ふぐちょうちんの保存を求める声に呼応。通天閣とセットで、写真が撮影できる場所の必要性を訴えた。「やっぱり地元のために残したいし、お役に立ちたい。誰でも写真が撮れる場所が必要。屋根もあるし、余生を送るのにはすごくいい場所」とラブコールを送った。通天閣をのぞむ施設内の自由通路にふぐちょうちんを吊り下げたい意向で、私有地のため市の基準にも抵触しないとした。

づぼらやの運営会社では、スパワールドとの間で譲渡の話はしていないとした上で「自社の倉庫にずっと保管しておきます。どこかにお譲りするお話もしておりませんし、ありません。大阪市から残したいと言われても…そもそも撤去しろと行政指導されていたので」と消極的だ。大阪に衝撃を与えた撤去騒動をよそに、ふぐちょうちんはひっそりと眠っている

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