外国人が日本で働いて驚いたこと 面接、職人さん、先輩たち…コンペイトウ会社で学びました

クカレカ・マリア クカレカ・マリア

 東欧のベラルーシ出身の私は19歳からずっと外国で暮らし、留学やアルバイト、インターンシップ、就職など様々なことを経験しました。その中で、一番甘くて不思議な経験はコンペイトウを作っている大阪の企業で働かせてもらったことでした。

 今から1年半前に仕事を探していたとき、ある菓子メーカーがちょうど外国人を募集しているのを発見しました。外国の友達に聞いても当然、コンペイトウについて知っている人はおらず「何これ」状態だったのですが、日本の友達に聞くと「コンペイトウは日本の有名な星の形をした砂糖菓子だよ」と優しい笑顔で説明してくれました。子どものころ、ひな祭りで何回ももらうものなんですよね?

 星の形の砂糖菓子と聞いて、まず思ったのは型にはめて作るなら結構簡単そうなので、1日に何トンでも作れるんじゃないかということでした。日本人にとって、こんなに懐かしみのあるコンペイトウはどんなものだろうという好奇心と、無類の甘いもの好きの私は喜び勇んで面接を受けることにしました。

 一次面接は合格。そして、二次面接もパス。まだあるのか、最終面接にもなんとか合格(日本の就活大変!)し、期待に胸を膨らませ、それと別腹を空かせて入社の日を迎えました。美味しくなる…じゃなくておもしろくなるぞ!と思いながら。

徐々に明らかになる「コンペイトウ」の真実

 まず、入社後、最初の驚きはコンペイトウが日本のお菓子ではなかったことです。後に知ったことですが、戦国時代にポルトガルから西日本へ伝えられたそうで、このことは日本の人たちでも知らない人が少なくないようです。

 2つ目はコンペイトウを作ることは私が思っていたよりも難しいということでした。グラニュー糖を大きい鉄の釜の中に入れて、蜜を掛けながら思っていた5倍の時間(何日だと思います?なんと、半月です)を掛け、回転する釜の中で徐々に星形になっていきます。

 しかも職人さんによると、釜の角度や職人さんの研ぎ澄まされた感覚で、マジックのようにトゲトゲがあるかわいいコンペイトウができるとのこと。さらに、工場内の熱いこと熱いこと!こんな中で微妙な角度調整に神経を使ったり、重い容器に入った蜜を運んだり、コンペイトウの角が出ない時には、頭と経験を使って解決したり、色と味をつけたり…まさに重労働です。

 さらにさらに、こんな重労働を半月行って、1つの釜からできるコンペイトウは、たった100キロ。日本人の心はどれだけ強いんだと。入社直後は、こんな衝撃ばかりの情報と工場の熱気で、頭がふらふらになってしまいました。

 そんなこんなで、コンペイトウには甘さだけでなく、歴史もあり、そして独特の作り方だということが分かっていったのです。余談ですが、その会社ではコンペイトウが食べ放題でした。従業員のあらゆるストレスにスマートかつシンプルにコミットする会社方針だと感激したものです。

外国人in日本の工場…その業務や環境は?

 その会社での私の仕事は日本語、中国語、英語を使って日本や外国のお客様に会社や工場のご案内をするというものでした。それだけでなく、体験活動もあったので、そのイベントの司会なども行いました。やはり、外国人には語学力が求められるのです。しかし、それ以上に会社やその商品を熱心に勉強することも大切です。これは外国人だからというわけではないですよね。コンペイトウの歴史や作り方などが分からなかったら、お客様に合わせる顔がないですから。また、私の業務は社内に限られず、外出イベントにも参加して、格好良く言えば「プロモーション戦略」に関わっていました。

 その当時は、会社の中には外国籍の社員が私しかいなくて、文化の違いや日本語能力のため、みなさんとすぐ仲良くなるのが難しかったことを覚えています。会議で自分の意見を言ったり、電話対応をしたり、苦手な業務に毎日悪戦苦闘していました。しかし、社長や先輩たちは優しくて、いつもゆっくり教えてくれ、自分自身成長ができたとじわじわ実感できるようになっていきました。

 このコンペイトウの会社での就業経験は1年弱と短かったのですが、まじめに働き、毎日楽しく過ごすことができました。いまでも社長と連絡したりもしますし、よく先輩たちとの忙しくて“甘い日々”を思い出しています。最後になりましたが、私の経験上では、みなさんが思っているより、外国人に対する排他感がなかったことを、いまから日本で働く外国の方に伝えたいです。

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