引越し会社といえば「重たい荷物」「キツそう」と敬遠され、慢性的な人手不足に悩む業界。しかし「とんでもない!おもしろい仕事ですよ」という人が神戸にいる。JR神戸駅前に本社を構える「ヒカリ引越センター」(神戸市中央区)の平戸伸和社長だ。柔和な表情にやせ形の体型、トラックの運転が苦手という、引越し会社のトップとは思えない社長が、陰キャラや引きこもり大歓迎の求人募集をスタートした。
引越し業務の魅力とは
70年前に運送会社で創業した神戸の老舗、ヒカリ引越センターは社員40名ほどの社員を抱え、近・中距離圏内を中心に展開する。
現在3代目の平戸社長の悩みの一つが人手不足。「体力的にキツそう」というイメージに加え「引越し屋は元気で明るく、力持ちでなければならない」という印象が、さらにハードルを高くしていると感じていた。
「無理に明るく振る舞わなくていい。普通の体力があればやれるのに」と悩んでいたとき、キャリアセンター職員から聞いた、若者の引きこもりの増加問題や、就職採用の選考から洩れがちな陰キャラと呼ばれる人たちの話を思い出す。「これはもったいない。働き手の多くが埋もれたままだ」と注目した。
引越し業務は、訪問する家も会う人も運ぶ荷物も毎日異なる。転職してきた社員も「毎日違う刺激の連続でおもしろいし、日中体を動かすから、夜はよく眠れて健康的」という平戸社長。チームで働くが、コミュニケーション力は不要。「挨拶と返事ができればいいですよ」という。
イメージにはイメージで。世間のイメージの逆をいく
引越し会社は見積もりを取る際、じかに訪問して荷物量をチェックする。プロの目視確認が必要なためだ。そのため交通費がかかっても、現地へ足を運び無償で行うのが当たり前とされる。「そこにITを導入したらどうなるでしょう。もしお客さまが運ぶ荷物を自分のスマホのカメラで映して送ってくれたら?僕たちが社内で確認し、見積もりが出せます。わざわざ訪問する必要がない。採用する多様な人材にコンピューターに強い人がいたら、仕事の効率化や簡素化するアイデアを実現できるかもしれません」
介護で使われる「パワースーツ」の導入も検討中だ。ただ現場では繊細な物も扱うし、動作の邪魔になると反対されているそう。しかし、他社がやらないアイデアはどんどん試したら良いという平戸社長は、負のイメージには、先進的な明るいイメージで対抗したいと語る。さらに社内にゲーム部を作って活動のバックアップも検討中。「引越し屋ゲーマーなんて楽しそうですよね」と夢を膨らませる。
コロナ禍でテレワーク社員が増え、引越しを伴う転勤をしないという企業も出てきた。引越し業界もこれまでの常識が通用しなくなるだろう。「だったら常識の逆をいく」「こだわらないことがこだわり」と、平戸社長は軽やかに挑戦し続ける。
■ ヒカリ引越センター 社員募集ページ
https://www.8144-recruit.com/job/detail/3
■ ヒカリ引越センター ホームページ
http://www.hiratokonpo.com/