義眼になっても大手術しても…元気な15歳の柴犬みーちゃん 今が幸せなのは目を見れば分かる!

岡部 充代 岡部 充代

 大好きなおもちゃのサッカーボールを投げてもらい“持ってこい遊び”をする姿は、とても15歳には見えません。しかも、左目が義眼だなんて…。柴犬のみーちゃんは今、奈良市に住んでいますが、生まれは東京。縁あって森谷正夫さん、京子さんご夫妻の“娘”になりました。

  森谷夫妻が奈良に家を建てたのが、ちょうど15年前。それを機に「犬を飼いたいね」という話になり、インターネットで里親募集している子を探しました。みーちゃんの家族を探していたのは、ペットショップのオーナーだったと言います。

「ブリーダーから購入して1カ月くらいで左目が白濁してきたそうです。病院で『生まれつきのもので治らないだろう』と言われたから販売はできない。そこで、目のことを受け入れて家族になってくれる人を探しているということでした」(正夫さん)

 当時、みーちゃんは生後3カ月半。新居が完成するまで預かってもらえるかを確認した上で、森谷夫妻はみーちゃんを迎えると決めました。

「そんなに悩みませんでしたね。私たちには子供がいませんし、目のこともしっかりケアしてあげられるだろうと。まだ会っていませんでしたけど、写真を見て話を聞いているだけで情がわいていました」(京子さん)

 東京まで車で迎えに行き、2人と1匹の生活が始まりました。奈良の病院で改めて『緑内障』と診断されたみーちゃんは、定期的な眼圧測定と点眼治療を継続していくことに。そうして2年がたった頃、「左目が大きくなって、出血し始めたんです」(京子さん)。緑内障とは、眼球内に眼房水と呼ばれる液体が過剰に溜まり、眼圧が上昇することで網膜や視神経に障害が起きる疾患のこと(人の場合は眼圧が正常で緑内障になることもあるそうです)。みーちゃんの左目が大きくなったのは、眼房水の量が多くなり、水を入れ過ぎた水風船がパンパンに膨らむように眼球が膨らんだから。視神経を圧迫するので、相当な痛みを伴うようです。

「眼科診療に力を入れている大阪の病院を紹介してもらい連れて行きました。先生は診察してすぐに『(眼球を)取りましょう』と。最初は眼球を摘出して縫い合わせる方法を提案してくださったのですが、それでは見た目がかわいそうなので、義眼を入れていただく手術をお願いしたいんです」(京子さん)

 手術費用は高額でしたが、森谷夫妻に迷いはありませんでした。みーちゃんの痛みを取ってあげるのが最優先だったからです。ただ、術後のケアは大変。1カ月間は3時間おきの点眼が必要で、日中は昼休みなどを利用してどちらかが家に帰り、夜中も交代で対応。そのかいあって、今は角膜保護のために一日1回点眼すればよくなりました。義眼になったことでみーちゃんが不便を感じている様子も全くないと言います。

「眼球の中身を取り出して義眼を入れていますが、外側はみーちゃん自身のものなので左目も動くんです。時々、見えているんじゃないかって思うくらいなんですよ」(京子さん)

 じっくりのぞき込めば、左右の目に違いがあることに気づきますが、それでも事情を知らなければ義眼とは分からないでしょう。みーちゃんは今も、パッチリおめめのかわいらしい女の子。お散歩仲間に“彼氏”が複数いるというモテっぷりです。

 昨年11月には乳腺にできたしこりを取るための手術をし、同時に肥大しつつあった子宮と卵巣も摘出。15歳の体に全身麻酔は負担が大きかったのか、1カ月くらい眼振が続き、よろけて転んだり、同じ方向にぐるぐる回ったり…心配されましたが、それも落ち着きました。柴犬は認知症を発症しやすい犬種と言われていますが、その兆候はまだ見られず、年齢を感じさせるのは、家族が帰宅したことに気づかず、スヤスヤと眠っているときくらい。本当に元気な15歳です。

 片方の目が見えないことは、みーちゃんにとって不幸なことかもしれません。でも、ペットショップオーナーの誠実な対応のおかげで優しい家族と出会うことができ、愛情いっぱいに育てられた15年。今が幸せだということは、その表情、特に目を見れば分かります。

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