声帯を切られ、右前足の骨はぐちゃぐちゃ…つらい思いをしたチワワが甘えることを覚えて幸せに

岡部 充代 岡部 充代

 

 兵庫・西宮市に暮らす豊留有里さんの家には、15歳になるシーズーのみゆちゃんと、推定7歳のチワワの蘭子ちゃんがいます。“推定”が付くということは…。

「2匹目は保護犬をと思って、ずっと探していたんです。そんなとき『ジモティー』というサイトで出会ったのが蘭子でした。珍しい名前でしょう? もともとの名前で、呼ぶと振り向くから変えなかったんです。他の子とかぶらないのもいいかなって」(豊留さん)

 

 出会いは2018年1月。サイトで見た蘭子ちゃんのかわいさに家族全員がハートを射抜かれました。里親募集をしていたのは、大阪でブリーダーをしているという女性。ただ、蘭子ちゃんはその女性が繁殖させたわけではなかったそうです。

「友達が面倒を見られなくなったから引き取ったと言っていました」(豊留さん)

 一度“お見合い”をし、迎える準備をして正式に引き取った豊留さんですが、家に帰ってすぐ、蘭子ちゃんの鳴き声に違和感を覚えたと言います。

「かすれたような声だったんです。心配になってLINEで聞いたら、『声帯を切ってますからね』とあっさり言われてしまって…」(豊留さん)

 鳴き声がうるさいなどの理由で、犬の声帯除去手術を希望する人がいるのは事実のようです。ご近所から苦情が来て、でも手放したくないから仕方なく…というならまだしも(それもしつけを怠った飼い主の責任ですが)、繁殖業者の中には、動物病院に複数の犬を持ち込んで一斉手術を依頼したり、時に自らの手で、犬の喉を割りばしで突いて潰す不届き者までいるとか。

 

 蘭子ちゃんの場合、保護主が平然とその事実を伝えたということは、「面倒を見られなくなった友達」も繁殖業者で、声帯を切ることが当たり前のようになっていたのかもしれません。引き取ったときの蘭子ちゃんの様子を聞くと、劣悪な環境に置かれていたことが分かります。

「結構汚れていて臭かったんです。体重も1.8キロでガリガリだったし、毛もふさふさじゃなくて。1年くらいしてようやくふわふわの毛になりました。体重も今は3キロあります」(豊留さん)

 

 外にあまり出たことがないのか、最初に家の前の公園に連れて行ったときは、固まって動かなかったそうです。しかも、右前足には痛々しい傷もありました。

「2本のひっかき傷のようなものがあって、舐めるから最初はエリザベスカラーをしていたんですけど、それもストレスかなと。レントゲンを撮ってもらったら、骨がぐちゃぐちゃだと言われました。歩けてはいるので手術はしていませんが、足にいいと言われるサプリメントを飲ませたり、傷口には包帯を巻いています」(豊留さん)

 今も痛みや違和感があるのでしょうか、どうしても傷口を舐めてしまうため、2年たっても完治していませんが、救いは外の世界に慣れて、先住犬のみゆちゃんと一緒に仲良くお散歩に行っていること。実は後から来た蘭子ちゃんのほうが“天下”を取っているそうです。

「相性は…悪いですね(苦笑)。みゆはもう15歳ですし、もともとマイペースなのでケンカにはなりませんけど。うちに来たとき、蘭子がワーッて近づいて、みゆが逃げて。それ以来、蘭子の天下です(笑)」(豊留さん)

 

 蘭子ちゃんのことを知りたいと思った豊留さんは、アニマルコミュニケーターに見てもらったことがあるそうですが、「記憶を閉ざしていて読めない」と言われたとか。しかも2人に。余程つらい思いをしたのでしょう。

 でも今は、豊留さんの膝の上が大好きで、豊留さんのお父さんにソファーで撫でられるのが大好きで、かまってほしいときには肩をトントン…人に甘えることを覚えました。昔の記憶なんて思い出さなくていい!今が幸せなら、それでいいのです。

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