「アマゾン」と「アマゾン」が和解した―。川のことではない。京都市東山区の老舗喫茶店「コーヒーショップ アマゾン」とインターネット通販大手「アマゾン」の運営会社「アマゾンジャパン」のことだ。アマゾン店主の立石裕則さん(58)がアマゾン利用者からの間違い電話に頭を抱えているというニュースを受け、6月下旬の月曜日、アマゾンの社員らがアマゾンに足を運んだ。あー、なんだかややこしいけど、画期的な和解の場に記者が立ち会ったのでリポートする。
訪問したのはアマゾンジャパンの広報担当者や京都府京田辺市に昨秋オープンした商品発送拠点「京田辺フルフィルメントセンター(FC)」の責任者ら4人。昼過ぎに訪れ、かつお節ときゅうり、卵焼き、ノリを挟んだ人気商品「和風トースト」とブレンドコーヒーに舌鼓を打ち「おいしすぎる」と顔を見合わせた。
この日はほぼ満席状態。立石さんは忙しく立ち回っていたが、一息ついたところで広報担当者が切り出した。
「この度はお騒がせしてすみません」
紙袋から取り出したのはアマゾンジャパンのロゴが入ったTシャツやパーカー、マグカップなどグッズ計7点。グッズは従業員や取引先に配布するノベルティーだといい、立石さんは「(Tシャツなどは)あしたからユニホームで着ます。もらったマグカップは常連さんに『はい、どうぞ』と冗談で出したい」とちゃめっ気たっぷりに受け取った。
立石さんによると、間違い電話が相次いでいるというニュースの掲載後も2、3回は問い合わせがあったという。
「『この番号をどこで調べましたか』と聞いたら、電話番号を検索するアプリだと言われて。『アマゾン』で検索すると、上から2番目にうちの電話番号が出てくるんです。他のところにも間違い電話がかかっているんでしょうね」と立石さんは苦笑い。表記を「京都の喫茶店 アマゾン」と変更するよう、アプリ運営側に対策を依頼したという。
アマゾンジャパンの広報担当者は「『アマゾン』は20カ国で展開していますが、間違い電話の話はこれまで他の国で聞いたことがありません。国内でもないです」と話し、利用者に対して「カスタマーサービスには自分のアカウントからチャットやメールで問い合わせていただければ」と呼び掛けた。
プレゼントの贈呈後、立石さんとアマゾンジャパンの社員らは和やかに歓談した。立石さんが「創業は1972年です」と紹介すると、アマゾンジャパンの広報担当者が「私が生まれた年です」と驚いたり、京田辺FCの責任者が「和風トーストを従業員たちに食べさせたいです。カフェテリアで出せないかなあ」とつぶやくと、立石さんが「前もって言っていただけたらできる限り対応させていただきます」と応じたり。屋号の由来や創業当時のエピソードを語り合う場面もあった。
対面を終え、京田辺FC責任者の梶山浩史さんは「『アマゾン』という名前も同じですが、お客様を満足させるという志も同じだと来てみて分かりました。京都に貢献するという気持ちでおのおの頑張ったりコラボできるところは検討したりしたいです」と語った。
立石さんは「皆さん、気さくな方でした。『アマゾン』と『アマゾン』が和解したと書いておいてくださいね」と笑顔を見せた。