ゆりかもめの公式Twitterがつぶやいた、設備メンテナンスで使用していたノートパソコンの「引退のお知らせ」が話題になっています。なにをかくそう、そのノートパソコンは1980年台から90年台にかけて一世風靡したといわれる「PC-9801」…! 開業から25年間使われ続け、安全・安定運行を影から支えてきたのだというのですから、驚きです。最先端な雰囲気のウォーターフロントを走る新交通システムの運行に、こんな古いパソコンが関わっていただなんて…どんなふうに使われていたのか、同社に聞いてみました。
ゆりかもめは1995年に開業した新交通システムです。 コンピューター制御による無人の自動運転で、 東京の新橋と豊洲の間・14.7キロを結んでいます。観光施設やコンベンションセンターなどが林立する臨海部の副都心にアクセスする路線として、 朝のラッシュ時には3分間隔のダイヤで運行しており、1日平均13.3万人が利用しています。
7月2日に「ゆりかもめ公式お知らせ」(@yurikamome_info)アカウントがつぶやいたのは「設備メンテナンスで使用していたパソコン(写真)が引退しました」というツイート。「25年前のノートパソコン『PC-9801』で、開業から使用していました。持ち運びには苦労しましたが、安全・安定運行を陰から支える、頼れる一台でした。おつかれさまでした」とのコメントとともに投稿すると、7日夜までに約5.5万件の「いいね」がついています。
投稿を見た人たちからは、「すげえ、98とかまだ使われてるとこあるのか」「今までよく動いたな」と、驚く声が続々と。一方で、端末のことを懐かしがる人も多く、「同じもの、学生時代使っていました」「25年も使える国産PCすごい!」「当時はこれを見るとワクワクしたもんよ」といったコメントもありました。また、ゆりかもめの車両は20年程度で更新されており、新しいタイプの車両も増備が進んでいることから「電車よりも長生きのノートパソコンw」と驚く人もいました。
投稿について、同社の広報担当者に聞きました。
―25年前の端末が使われていたなんて、ちょっと驚きです。
「この端末は、駅などに設置してある駅ATO装置(自動列車運転装置)が故障した際に、装置の情報を読み取り、故障原因を突き止めるために使われていました」
―えっ…ATO装置ですか?
「ゆりかもめの自動運転の要となる装置です。電車の走行状況にまつわる情報を常にやり取りすることで、電車の停車位置や扉の開閉などを制御しています」
―そんな装置の保守に使われていたんですね。
「ちょうど今年の3月まで駅ATO装置を更新する工事を行っていました。装置が新しくなったことで、メンテナンスに使う端末も変わることになり、このたび引退となりました。次の端末は新しいノートパソコンです」
―しかし、大変な反響です。
「長年の安全運行を支えてくれた端末なので、感謝の意味もこめて情報発信しましたが、ここまで反響があるとは思っていませんでした。製造メーカーのNECからもリプライをもらい、大変驚いています」
◇ ◇
…今回の投稿には、かつてPC-9801を製造・販売していたNECの公式Twitterも「長らくご利用いただきありがとうございます」と反応。NECのパソコン事業を手掛ける会社・NECパーソナルコンピュータの公式Twitterも「25年もの長きに渡り、ウチの子がお世話になりました。弊社の工場でそれを設計したチーム(親たち⁉)も、このお話を大変喜んでおります。この<PC-9801>をもし廃棄されるご予定でしたら、私どもの工場に展示させていただきたいのですが、行き先は決まっていらっしゃいますでしょうか?」と呼びかけていました。
ゆりかもめの公式Twitterは7日午前、NECパーソナルコンピュータの呼びかけに対し、「是非、生まれた故郷で、親御さん達と楽しく過ごし、第二の人生を謳歌してほしいと思います」と投稿しました。
Twitterにはこの呼びかけのリプライ以外にも、端末が貴重な資料として収集されることを願う声が多数寄せられていました。あらためて引退した端末の行く末に、注目が集まっています。