壁に映る、特攻隊員の最期の言葉…巨大「防空壕シアター」が公開 「紫電改」が飛び立った鶉野飛行場跡地

國松 珠実 國松 珠実

兵庫県加西市の鶉野(うずらの)飛行場跡地にある、巨大防空壕内のシアター施設が今月21日から一般公開された。戦時中に自力発電所として建設された防空壕内部は、奥行き14.5メートル、幅と高さが5メートルのコンクリートの空間。壁三方と天井をスクリーンにして、特攻隊員が実際に家族らに宛ててつづった手紙を朗読する映像が映し出される。

 「白鷺隊」隊員らの手紙

姫路海軍航空隊鶉野(うずらの)飛行場は昭和18年10月に完成した、パイロット育成のための飛行場。昭和20年、航空隊の練習生のうち腕の良いパイロットから希望者を募り、「白鷺(はくろ)隊」として編成された。彼らの任務は、操縦する飛行機ごと敵の艦船に体当たりするという神風特別攻撃隊。大分県の宇佐市を経由して鹿児島県の鹿屋から飛び立ち、終戦までに63名が戦死した。

シアターでは、家族に向けての感謝や謝罪、そして自分がいなくなった後の妻や子どもに託す言葉をつづった手紙が読まれる。妊娠中の妻を気遣い、生まれてくる子どもの名前の案が書かれたものや、週末に下宿させてもらっていた近隣住民への礼が述べられた手紙もある。

1回1本の上映中、登場する隊員は3人。映像作品は3本用意されている。

 日本で唯一の飛行場跡と、これまた唯一の実物大模型「紫電改」

防空壕シアターのある鶉野飛行場は、日本で唯一、当時のままの滑走路跡を残す飛行場だ。さらなる目玉は、昨年6月にお目見えした実物大模型の局地戦闘機「紫電改(しでんかい)」。「紫電改」とは第二次大戦末期に作られた戦闘機で、同じく戦闘機「紫電」を改良したもの。姫路で作られたこれらは、鶉野飛行場に隣接する川西航空機姫路製作所鶉野工場に運ばれ、500機あまりが組み立てられた。

現在の「紫電改」は、普段、格納庫を模した防災備蓄倉庫内に保管されているが、透明のアクリル板ごしに見学可。毎月第1、第3日曜日の10時から15時の間は青空の下に公開される。予約なし、無料。

 コロナウイルス拡散防止で施設は3月から5月まで公開を休止していたが、6月より再開。昨年6月から今年2月までの来場者数は約2万3千500人で、家族連れやファン、ツーリングの客らでにぎわう。防空壕シアターが公開された21日も、マスク姿の大勢の観光客が訪れていた。

 ■防空壕シアター
毎月第1、第3日曜の1日4回の上映。1回につき20名入場可。事前予約制。電話かFAX、郵送、メールにて3カ月先上映分まで予約可能だが、早めの予約を。空き状況は電話で確認できる。無料。
※約20分間の映像のほかボランティアガイドによる説明あり
http://www.city.kasai.hyogo.jp/02kank/18uzur/05thea.htm

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