「馬酔」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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俳句を嗜む人だと、「馬酔木(あしび)」という俳句雑誌を知っている人も多いだろう。俳人水原秋桜子が主催した雑誌で、山口誓子、石田波響など、戦後を代表する俳人たちが集っていた。従って、馬酔木と書いて「あしび」と読める人は比較的多い。しかし、名字では「馬酔木」ではなく「馬酔」と書き、読み方も「あせび」である。
そもそも「あせび」とは、ツツジ科の植物のこと。古代、アセビは「あしび」といわれ、「万葉集」では「馬酔木」と表記した。雑誌「馬酔木」のタイトルと漢字はここに由来している。
なぜ「馬酔木」と書くかというと、馬がアセビの葉を食べると酔ったような状態になることから、「アシビ」には馬が酔う木=馬酔木という漢字があてられたものだ。
なお、アセビは「馬酔」という漢字をあてることもあり、名字でも「馬酔」となっている。
山口県熊毛町などにある名字だが、難読であることから漢字の読み方通りに、「ますい」とも読む。