「悲観ばかりもしていられない」「できうる限りの対策を…」終わり見えぬコロナ打撃に自営業ら苦悩

平藤 清刀 平藤 清刀

新型コロナウイルスによる感染症の拡大で営業の自粛要請や活動の制限などが続く中、フリーランスと自営業を取り巻く状況は厳しさを増している。

2月以降の公演はすべて中止または延期…クラシック業界は危機的状況

大阪市内に住む声楽家・N.Aさん(女性)は、クラシック業界の窮状を訴える。

「演奏会、オペラの公演は2月以降、大小問わずすべて中止か延期です。演奏者だけではありません。舞台に携わるスタッフも仕事がなくなりました」

たとえ1日でも公演を行うためには、個人で稽古をしてから、最低3カ月前から合同稽古に入る。本番が中止になると、当然に出演料が入ってこない。だが、それだけではない。

「稽古ギャランティと交通費は、出演料と一緒にまとめて支払われることが多いです。本番が中止になったら、制作会社によっては1円も支払われないことがあります。完全に赤字です」

収入の半分以上を占めるレッスンや指導などは、ウイルスの感染原因となる「3密」(密集・密閉・密接)に近い環境になるため、カルチャースクールや大学関係などすべて、一切の補償もなく打ち切られたという。

個人レッスンも然り。換気のよくない防音室で行うため、自発的に休止せざるを得なかった。

「芸術は遊びではありません。時間と知恵、そして努力とお金を費やして大切な文化を守り、次世代へ継承するという強い思いがなければ続けられない厳しい世界です。芸術家が生きていけるように、しっかりと目を向ける政治家が出てきてほしいと切に願います」

「受け渡し方法を工夫して」「お客様の安らぎのため」営業継続

大阪市阿倍野区にあるビルの一室で、カメラの販売と修理業を営むS.Kさん(男性)。「修理のために持参される方、修理を終えたカメラを引き取りに来られる方は、若干ですが減りました。お店まで移動してくる道中を警戒している方がいらっしゃるのかなと思います」

来店することに不安を覚えるお客さんには、宅配便の利用も受け付けているそうだ。

売り上げは減ったが、今はまだ壊滅的ではないという。「おそらく給付金の対象から外れるでしょう。うれしいのやらどうやらですが、とにかく一刻も早く終息してくれることを願うばかりです」

   ◇   ◇

大阪府門真市で、奥さんと2人でコーヒー専門店を切り盛りするN.Eさん(男性)。「原則として、ご来店は控えめになさいますことを推奨します」としながらも、「一杯のコーヒーから得る安らぎは気分を転換し、活力になり、免疫を高めることも事実であることと思っています」という考え方のもと、「皆さまの安寧のために、通常通りの営業をいたします」という。

もちろん無防備ではない。ウイルスや病原性細菌を不活化、抑制することが科学的に実証されているフィトンチッド溶液を噴霧する空気清浄機(フィトンエアー)を常に稼働させ、換気を常時行うなど、できうる限りの対策を取る。

   ◇   ◇

自営でハウスクリーニング業を営むT.Hさん(男性)。仕事の特性上、個人宅を訪問してエアコンや水回りの清掃を行う作業もある。そのせいか、新規で予約を受けていたお客さんからのキャンセルが、少しずつ入り始めたという。

「外から訪問するので、用心のため、今回はごめんなさいということでしょうね」

廃業を考え始めている同業者もあるらしく、T.Hさんも、今の状況が長引くと打撃は少なくないだろうと予測している。しかし悲観ばかりもしていられない。

「清掃のニーズはなくなりません。今日キャンセルされたお客さんも、必ず戻ってくれるはずです。新型コロナウイルスが終息したあと、お客さんがほかの業者へ流れないように、そしてさらにお客さんを増やすことも考えて、今からアクションを起こしておかないといけません」

以前からYouTubeを活用して、情報発信にも積極的に取り組んでいる。

役所でも「手続きの滞在時間を減らす」啓発

政府は4月7日、大阪府を含む7都府県を対象として、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を発出した。

一夜明けた8日、住民と密接な関係をもつ最前線ともいうべき区役所の様子はどうだったか。筆者の地元・大阪市東住吉区役所の様子を、森本暢之(もりもとのぶゆき)総合調整担当課長に聞いた。

「区役所としての対応は、これまでと変わりません」としながらも、職員は前後1時間程度の時差出勤を認めてラッシュ時の通勤を避けている。来庁者への対応については、インターネット環境のある人は各種手続きの書類を自宅でダウンロードしてもらい、記入してから来庁してもらうことで役所での滞在時間の短縮が図れるという。

「毎年のことですが、3月・4月は転入と転出が増えます。転入届の期限は通常14日以内としていますが、一時に集中することを避けるために、期限を過ぎても受理するよう柔軟に対応しています。また転出届は、以前から郵送でも受け付けていましたが、さらなる啓発に取り組んでいるところです」

自衛隊…即応予備自衛官の訓練召集は計画通りの日程で

年間30日の訓練出頭が義務付けられている即応予備自衛官は、4月から新年度の訓練が始まる。

自衛隊は集団生活、部隊行動が基本。ふだんは民間で働いている即応予備自衛官も、訓練に出頭している期間は隊舎で集団生活を送る。

緊急事態宣言が出される前から、誰もが「もし感染者がいたら、駐屯地がクラスターになりかねない」という不安を抱いていた。

秘密保全の関係上、固有名詞を詳細に書くことを控えるが、大阪府南部にある駐屯地で令和2年度最初の訓練日程が始まった。ここで訓練を行うのは、即応予備自衛官を編制の主体とする普通科中隊だ。

結論からいうと、訓練は計画通りに行われている。緊急事態宣言が発出されたことを受けてどう対応するのか、上級部隊から指示がないため、不安を抱えながらも計画通りやらざるを得ないという。

筆者は5年前まで、同じ部隊に所属する即応予備自衛官だった。文句を言っても仕方がない。訓練を担当する常備自衛官、訓練に出頭した即応予備自衛官、どうかご無事でと祈らずにはいられない。

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