保護した子猫の命を預かるミルクボランティア 向いている人はこんな人

鶴野 浩己 鶴野 浩己

預かりボランティアとは、愛護団体が保護した動物を一般家庭で一時的に預かるスタッフのこと。里親が見つかるまで預かるケースが多いが、「2週間だけ」「1年だけ」など、期間限定での預かりに対応している団体も多い。

中でも、勤め人には難しいのが、離乳するまでの子猫を預かる「ミルクボランティア」。子猫の離乳は1か月前後が目安とされるが、生後10日くらいまでは1日に8~12回、それ以降の離乳までで1日4~8回に分けて哺乳瓶でミルクを与えなければならない。さらに、生後2週間頃までは排泄のサポートも必要なので、基本的に家にいて世話ができる人でないと難しい。

愛媛県四国中央市の愛護団体「チームすず猫」代表の町田さんは「ミルクボランティアは、世話をできる時間の確保はもちろんのこと、経験者でないと難しいと考えています。離乳までの子猫は世話の仕方がまさに生死を分けるので、うちでは経験者のみにお願いしています」と話した。

難しいからこそ、なり手が少ない役割でもあるミルクボランティアは、愛護団体にとっても、なくてはならない存在だ。

「人間は怖くない」と教えてあげて

では、猫を預かる際には、どういったことに気を付ければいいのか。

町田さんは「先住猫がいる場合は、子猫でも成猫でも基本的には部屋を分けるか、ケージ等で生活スペースを分けてあげてほしいですね。先住猫と相性が良さそうなら生活スペースを一緒にしても大丈夫でしょうが、合わないものを無理に合わせようとするのは互いにストレスになりますから」と語る。先住猫がエイズキャリア陽性の場合も部屋を分ければOK。逆に、預かり猫がエイズキャリア陽性で、先住猫がキャリアを持っていないのであれば、部屋を分けるか、先住猫にエイズワクチンを打てば予防ができる。

「預かった猫には、人間の温かさを教えてあげてほしい」と町田さん。「つらい思いをしてきた猫が多いので、できるだけ触れ合う時間をとってもらえたら。シェルターではなかなか1対1で見てあげられないので、家で暮らす幸せも教えてあげてくれるとうれしいです」。

猫好きにとって、猫が伸び伸びと暮らしている様子は、それだけで温かな気持ちになるもの。預かっているうちに愛着がわき、家族に迎え入れたくなればそのまま引き取ることも可能だ。

「大切にしていた猫が亡くなって心にぽかんと穴が開いてしまった人は、新しい猫を迎え入れる勇気がなかなかわかないものです。でも、預かりボランティアなら、亡くなった猫への思いを大切にしながら、新たな猫と触れ合うことができる。猫もたくさんの愛情を求めているし、その方も猫特有のぬくもりや癒しを受け取れる。そうしながら心の傷が癒えてきて、預かった猫を家族として迎えてくれた方もいらっしゃいます」。

ほかに、「保護活動に参加する時間はないけれど、猫を助けたいという思いがある猫好きさん」などが預かりボランティアに向いているそうだ。

愛護団体は、動物を保護するシェルターを保有するところから、スタッフが分担して自宅で保護しているところまで規模感も様々。ただ、どの団体も新たな受け入れが難しいほど、多くの犬や猫を保護している。預かりボランティアが1人増えれば、少なくとも1匹の猫がシェルターを出られ、行き場を失った新たな猫がシェルターに入れる。

預かりボランティアの数だけ、助かる命が増えるのだ。

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