「初めて会ったとき、『いとちゃん』はゴミ袋の汁をなめていました」
そんな言葉とともに投稿された黒猫の物語が、Instagramで注目を集めています。ガリガリにやせ、飢えと恐怖の中で生きていた保護猫・いとちゃん。人を怖がりながらも必死に生き抜いた猫が、ついに“ずっとのおうち”を見つけるまでの軌跡に、多くの人が胸を打たれています。
投稿したのは、保護猫活動を行うアクノアさん(@aqunoa33)。現在は里親さんのもとで幸せに暮らしている、いとちゃんの姿を紹介しました。
ゴミ袋の汁をなめていた生後7カ月の黒猫
アクノアさんによると、いとちゃんと出会ったのは、別の高齢猫を保護して動物病院へ連れて行った帰り道でした。
「保護時の診察では、推定生後7カ月くらいと言われました。ガリガリの黒猫がゴミ袋に顔を入れて、臭いをかいだり、なめたりしていました」
当時、アクノアさんは捕獲用の猫用フードを持っていました。食べ物の匂いに気付いたいとちゃんは、怖がりながらも近づいてきたといいます。
「飢餓状態だったいとちゃんは、とても怖いはずなのに食べ物が欲しくて近寄ってきました」
そのまま保護されたいとちゃんの体はベタベタで、生ぐさい臭いがしていたそうです。ゴミ袋の中をあさりながら、生き延びていたのではないかと感じたといいます。
急な物音でパニック→フェンスも飛び越える怖がりな性格
保護後も、いとちゃんには外で暮らしていたころの恐怖が深く残っていました。
「大きな物音や急な人の動きで、すごいスピードで逃げました。なでられて気持ちよさそうにしていても、急な音がすると突然走って逃げてしまいました」
怖がりな性格のため、外にいたころも十分な量のご飯を食べられていなかったのではないかと、アクノアさんは振り返ります。さらに、いとちゃんは運動神経が抜群。驚くと猫用フェンスを飛び越えるほどだったため、脱走への不安もありました。
一方で、本来は甘えん坊な一面も持っていたそうです。
「慣れると、なでられるのもブラシも大好きでした。名前を呼ぶと、上手にお返事もしてくれました」
「アクノアさんの力になりたい」運命の出会い
そんな中、ある里親希望者から連絡が届きます。
その方はInstagramでアクノアさんの活動を知り、「力になりたい」と感じていたそうです。同時に里親募集サイトでいとちゃんを見つけ、「ぜひ迎えたい」と申し出てくれました。
アクノアさんは、相手の気持ちに寄り添う仕事をされている里親さんなら、いとちゃんのペースを大切にしてくれると感じたといいます。
ご飯を食べたのは2日後…焦らず待ち続けた里親さん
トライアル開始直後、いとちゃんは環境の変化に戸惑いました。ケージ内のクッションの下に隠れ、ご飯を食べたのは2日後。水も飲まず、トイレもせず、おやつにも手をつけなかったそうです。
「多くの保護猫は、トライアルに入ると同じような状態になります」
しかし、里親さんは焦りませんでした。
「いとちゃんのペースに合わせてくださいました。毎日の小さな進歩を喜んでくださいました」
その優しさは確実に伝わっていたのでしょう。アクノアさんの予想をはるかに超えるスピードで、いとちゃんは心を開いていきました。
なでられながら眠る姿に胸が熱くなった
やがて、いとちゃんは里親さんに体を預けるようになります。長い時間なでてもらい、そのまま眠ってしまうこともあったそうです。その様子を撮影した動画を見たアクノアさんは、思わず胸が熱くなったと振り返ります。
「送られてきた動画で、なでながら寝ているいとちゃんを初めて見ました」
アクノアさんのもとには常時20匹ほどの保護猫がいるため、1匹だけを長時間なで続けることは難しかったといいます。
「眠るまでずっと、なでてもらっているいとちゃんを見て胸が熱くなりました」
現在は正式譲渡が完了し、里親さんの「いーとちゃん♡」という呼びかけに返事をしたり、体をコロンと横たえて甘えたりしているそうです。飢えと恐怖の中でゴミ袋をあさっていた黒猫は今、大好きな家族を独り占めしながら穏やかな毎日を過ごしています。
投稿には「涙が出ました」「奇跡的な出会いに感謝感激」「本当に素敵なご縁ですね」「いとちゃん、幸せになってね」「保護してくださってありがとうございます」「安心して眠れる場所ができてよかった」などの声と、5万6000件を超える「いいね」が寄せられています。外で生きる猫たちの厳しい現実と、一つの命をつないだ優しさのバトンに、多くの人が心を動かされたようです。