土に還るプラスチックで子ども用定規を開発! SDGsで環境の大切さを伝えよう

國松 珠実 國松 珠実

 古墳で沸く大阪府堺市の企業が、子ども向けの長さ12cmのプラスチック製定規を製作した。プラスチックといっても、土の中で分解するサトウキビ由来の生分解性樹脂100%のプラスチック。植物由来だから子どもが誤って口に入れても安心だ。しかし熱に弱く成形しにくい性質のため、製品化に苦労する素材だそう。製作したサンエイプラテック(大阪府堺市)の岡田全也社長に話を聞いた。

  「堺市が先月2月15日に開催した、SDGsの環境シンポジウムで約600本を参加した皆さまへ配布させてもらった」という岡田社長。堺のものづくり企業を応援する『さかいセカンドスタートアップ』プログラムへの参加がきっかけで、定規の製作に至ったという。

 素材はPLA(ポリ乳酸。Polylactic Acid(ポリラクティック・アシッド)の略称)という、生分解性プラスチックの一種だ。PLAの最大の特徴は、植物由来であること。CO2(二酸化炭素)を吸って生育する植物が原料で、土に埋めると微生物が数年かけ、再びCO2と水に分解する。余分なCO2を増やさない循環性と、環境性の高さが評価されているのだ。また、成形の工程では甘い香りが漂うそう。「正体はサトウキビに含まれるデンプンなどの成分。通常のプラスチックの成形過程では、このような良い香りは出ません」。

 製造には苦労した。通常のプラスチックと樹脂の粘度が異なるので、たとえば定規の金型に流し込む速さによっては気泡による傷ができたり、途中で固まって成形しづらくなったりする。強度や耐熱性も低い。しかし「定規に強度や耐熱性はさほど必要ではないし、12cmの長さはペンケースにも入りやすい。持ち運びに便利だ。日頃使う物にSDGsのロゴがあれば、環境意識も高まる」。

  定規の金型を作った赤坂金型彫刻所(大阪府八尾市)の三代目赤坂兵之助社長によると、PLAは2005年に愛知県で開催された国際博覧会「愛・地球博」でコーヒーカップやトレーで使われたものの、市場へ広めるには開発コストがかかるなど課題が多かった。今も他のプラスチックに比べコストはかかるが、2019年のG20において『大阪ブルー・オーシャン・ビジョン』が共有されたように、海洋プラスチック問題など環境への関心はいっそう高まっている。積極的にPLA製品を広めるべきと提言する赤坂社長と岡田社長が出会い、定規の着想を得て実現した。

 「今の気候変動は危うい状況です。それを子どもたちに伝え、一緒に環境を守っていきたい。この状況下で生まれた彼らにとって、今の環境は通常なのです。危ういと認識する私の世代が、次世代を担う子どもたちと共に地球を守っていかなければ」と語る岡田社長は、次の新製品へのアイデアをふくらませている。

  現在SDGs定規の販売は未定だが、子どもたちが買い求めやすい価格設定を検討中。企業には希望に応じて環境の啓蒙活動や企業ノベルティに、ロゴを変えての製造も可能だ。

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