3.11を乗り越え、たくましく優雅に醸される日本酒…モーツァルトを聴いて育った「蔵粋(クラシック)」

吉田 綾子 吉田 綾子

福島県喜多方市にある小原酒造株式会社は創業1717年。今年で303年の歴史を誇る酒蔵である。初代 小原嘉左衛門氏から酒造りを始め、現在の代表取締役 小原公助氏が10代目となる。

小原酒造は、喜多方ラーメンでも有名な街中にあり、江戸時代からの蔵が立ち並び風情がある、いわゆる喜多方市の繁華街にたたずむ酒蔵である。2011年3月11日までは、毎日がお祭りかと思うほど、道には人が溢れていたという。それが東日本大震災から一転。静かになってしまったと少し寂しげに語る小原さん。

蔵を訪ねた日は、今年の暖冬とは裏腹に雪が吹雪いていた。風情ある街並みにはさらに静粛した時間が流れているように感じた。

そんな江戸時代から残る土壁やレンガに囲まれた蔵で、淑やかにモーツァルトを聴きながら育つ日本酒があると知り訪ねた。その名も「蔵粋(クラシック)」。

モーツァルト協会はじめ、全国の音楽関係者に根強いファンが多いという蔵粋シリーズには、造りの違いによって4種類の銘柄がある。一番高級な純米大吟醸は「マエストロ」それに続き「交響曲」「管弦楽」「協奏曲」。この製法は昭和61年、30年ほど前から始めたという。

   ◇   ◇

ー醪(もろみ)に音楽を聞かせようと思ったきっかけは?

「約30年前の国税局醸造試験所でのことでした。各チームで、研究データを考えなければならず、いろんな文献を見ながら探していたんです。その時、ドイツで牛の搾乳時に音楽を聞かせているという研究結果を見つけました。だったら、日本酒の発酵にも音楽を聞かせて研究してみようと思ったわけです」

ークラシック音楽がお好きなのですか?

「いえ、自分は元々ジャズが好きなんです。実験では、クラシック音楽、ジャズ、演歌の3部門を選び、それぞれの醪に聞かせました。クラシック音楽は、モーツァルト、ベートーベン、JSバッハの3種類、ジャズはマイルスデイビス、演歌は北島三郎を聞かせました」

ーなぜモーツァルトなのですか?

「モーツァルトが一番、酵母の増殖速度が早かったのです。なぜモーツァルトなのかということはこれからも解明が必要なのですが。さらに、後の研究で、モーツァルトとローリングストーンズが、同じく酵母増殖速度が早いというデータ結果が出てきました。ただローリングストーンズは著作権の問題もあり、残念ながら使うことができないんですよ」

ー音楽を聞かせたものとの味の違いは?

「はい、音楽を聞かせて醸した日本酒の方が吟醸香のある柔らかな酒質になっています。喜多方にはラーメン神社や温泉、美味しい日本酒がありますので、皆さんぜひ遊びにきてください」

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