祖父が倒れ廃業の老舗銭湯…孫が6年ぶりに新装オープン 「再開におじいさんも喜んでいるはず」

京都新聞社 京都新聞社

 2014年に店主が病に倒れ、廃業を余儀なくされた銭湯「銀座湯」(京都市左京区吉田近衛町)がこのほど、6年ぶりに新装オープンした。大正期に創業した老舗ののれんを継いだのは、店主だった祖父の姿を見て、幼い頃から銭湯に親しんできた孫の男性。「多くの世代が集まるコミュニケーションの場。銭湯文化を盛り上げられたら」と発奮する。

 銀座湯は、京都大医学部付属病院東側の銀座通に面する立地からその名が付いた。3代目店主の故吉本照一さん(享年86)が、妻の年枝さん(86)とともに長年切り盛りしていたが、14年5月に脳梗塞で倒れ、そのまま店も畳むことになった。

 「突然の廃業で祖父母は心残りだったと思う。長く続いた銭湯が無くなるのはもったいなかった」。10代後半から清掃を手伝ってきた孫の中西真浩さん(33)は17年、照一さんが亡くなる1カ月ほど前に銀座湯再開の決心を伝え、翌年から本格的に動き始めた。

 温度管理などの設備は手動だったが、熟練の技が求められるため自動式にした。番台はカウンターにし、脱衣場の床や壁も一新。掃除は同業者に改めて教わり、かびが生えていた浴室も徹底的に磨き、見違えるほどの美しさに。営業許可などの手続きにも苦労したが、今月14日の再開にこぎつけた。

 府公衆浴場業生活衛生同業組合によると、市内の銭湯はこの10年で60店ほど減り、現在は約100店。中西さんは「経営に不安はあるけど、掃除など仕事に手を抜かなかった祖父と、お客さんと気さくに話していた祖母の良さを引き継ぎたい」。会員制交流サイト(SNS)での情報発信など新しいスタイルも打ち出したいという。

 年枝さんは「最初は半信半疑だったけど、再開できておじいさんも喜んでいるはず」と笑顔を見せ、中西さんは「同業の人たちとも情報交換し、銭湯ファンを増やしたい」と意気込む。

 営業は、午後3時~翌午前1時(水曜定休)。

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