「い~しや~きいも~、おいもっ」。そんな音声と共に、かつてはリヤカー、その後も軽トラックで街を流していた「焼きいも屋さん」が減少し、現在はスーパーやコンビニでいつでも買える「スイーツ」として定着している。流通アナリストの渡辺広明氏は当サイトの取材に対し、自然の甘さなどのヘルシー感覚が若い女性の人気を呼んでいると指摘した。
コンビニ業界の中では、ローソンストア100がいち早く本格的な「焼きいも販売」に取り組んでいる。渡辺氏の取材に対し、同社の広報担当・森口紫乃さんは「10年以上販売しています。2013年からは『安納芋』の販売も開始しました。通常はレジ横の一等地(コンビニでは肉まんやからあげを販売している場所)で販売したり、寒い日には店頭でも販売しています」と現状を説明した。
なぜ、業界の中でもいち早く取り扱うようになったのか。森口さんは「もともと生鮮部門が強く、良質なさつまいもを大量に仕入れるルートを持っていました。野菜として売るだけではなく、『お店で焼いた、焼きたてアツアツの焼きいも』という付加価値をつけた商品にして販売したところ大変好評だったため、年々拡大し、現在は全店で販売しています」という。
購入層について、森口さんは「特に女性の方に人気です。お子様のおやつとして購入されるお母さんも多いです。高齢の方にも人気の商品でしたが、最近、若い女性が増えました。平均で1店舗1日約20本程度を販売。月間約200トンにもなる扱い量です」と明かす。
商品の特徴、品種、焼き方の工夫は?森口さんは「焼いもに適した『紅はるか』『紅あずま』などを中心に、国産のさつまいもを使っています。ホクホクとして甘い香りが楽しめます。こちらは100円(税別)です。また、種子島産『安納芋』はネットリとした食感が特徴で甘味も強いです。こちらは200円(税別)です。いずれも店舗の専用・焼きいも機を使い、遠赤外線の効果で、旨み・甘味を凝縮しておいしく焼き上げます」と解説した。
渡辺氏は「マルエツやドン・キホーテなどスーパーの店内でも焼きいもを売っており、昔ながらのホクホクしたタイプより、しっとりしたスイーツ的な商品が売れる傾向にある。シンガポールのドン・キホーテでは焼きいもに行列ができていて、海外ではスイートポテト的なしっとりしたタイプが人気のようです」と解説。ローソン100が業界で先行する理由として「安納芋、紅あずまといったブランドにこだわったことが大きい。食べ比べられるのもいい」と付け加えた。
森口さんは「ここ2~3年で美容・健康への意識の高そうな、若い女性の購入者も増えてきています。食物繊維が豊富、ビタミンたっぷりという情報が広がってきたおかげかなと思います。そこで、公式ホームページでは、主に女性の方に向けて焼いものアレンジレシピも紹介しています」と補足した。
焼きいもの専門店も次々にオープン。全国各地の名店が軒を連ねるイベント「品川やきいもテラス」(2月2日まで)の開幕日となる27日に記者は会場を訪ねた。やはり若い女性の姿が目立っていた。
主催者であるNTT都市開発株式会社の堀尾美月さんは当サイトに「2017年からで今年で4回目になります。前回は7日間で5万8000人を動員しましたが、今年は6万人を目標としています。8割がたは女性ですが、お子様連れのご家族、女子高生、カップルと幅広い年代の方に来ていただいています」と明かした。
渡辺氏は「若い女性に人気ということは、おいしいというだけでなく、自然な甘さで体に優しいことや、繊維質やビタミンが多いというヘルシー志向があると思います」と分析。さらに「外国で日本の文化が売れて欲しいですね。東京五輪の開幕は7月ですが、スーパーやコンビニでいつでも食べられるスイーツとして知ってもらうこともできるのでは」と期待を込めた。
五輪の夏に焼きいも…。そう、焼きいもは、もはや冬の季語ではなくなっているのかもしれない。