大阪の謎…「10円」でペットボトル飲料が買える自販機 こんな安くて大丈夫?社長さんに聞いてみた

平藤 清刀 平藤 清刀

ペットボトルの清涼飲料がワンコイン。しかも、そのワンコインが10円玉1コという、太っ腹な商いをしている自販機が大阪にある。その自販機があるのは、大阪市福島区玉川3丁目にある「大阪地卵(おおさかじらん)」という食品卸を営む会社の前。自販機の運営と商品の補充も、この会社が行っている。こんな衝撃の値段で売って、大丈夫なのだろうか。謎に挑むべく、社長の釜坂晃司さんに、お話を伺った。

10円で売って採算は取れているのか?…疑問をストレートにぶつけると、

「取れるわけがないじゃないですか(笑)」

やっぱり、そうか。

では、なぜ10円で販売しているのだろうか。

「賞味期限が1~2カ月前まで近づいてきた商品は、そのまま売れ残ってしまうと商品価値がなくなります。すると処分しなくてはならない。処分するにもお金がかかるわけです。だったらたとえ10円でも、売ったほうがいいという判断です。処分に費用をかけるより、絶対いいです」

釜坂さんの会社は食品卸業の傍ら、大阪と神戸を中心に約500台の自動販売機を展開している。そのすべてを10円に設定しているわけではなく、ほとんどが50~80円の価格帯での販売だ。それでも通常の価格よりはずいぶん安い。

「10円の自販機は会社の前にある2台だけです。さすがにあれは採算割れしていますが、他の自販機も合わせた全体で利益はあります」

清涼飲料の売れ行きは季節に左右される。冬は売れ行きが鈍くなるから、小売店からわりあい多くの売れ残りが出る。だから売れたらすぐ補充できる。

ただし、いわゆる「小売店で売れ残った商品」を売るため、商品の種類が一定ではない。だから自販機には敢えて目隠しをして、どんな商品が入っているか分からないようにしてある。筆者も試しに買ってみた。1回目と2回目で違うボタンを押したが、同じ商品が出てきた。

販売が厳しいのは夏だという。10円で売る商品が足りなくなるのだとか。

「夏は、あんまり売れ残らないんです。それでも、自販機をカラにしたらお客さんが離れてしまうから、採算割れを承知で賞味期限に余裕のある商品を投入することがあります」

そうした涙ぐましい努力のお陰か、10円自販機がちょっとした観光名所になっているという。うわさを聞き付けた国内外の旅行者が、わざわざ自販機のある場所を探し当てて写真を撮っていくらしい。

「いつだったか、中国からTVクルーが来て、自販機とその周辺を撮影していきました」

それからしばらく経って、1台の観光バスが会社の前に停車した。ぞろぞろ降りてきたのは中国人の団体客で、10円の自販機から、スーツケースが一杯になるまで爆買いしていったこともある。

「観光客が来てくれるんだったら」ということで、釜坂さんは会社の前に巨大な10円玉の看板を設置した。ここを訪れた人は、その看板をバックに写真を撮っていく。制作費には、ン十万円かかったという。

「サービスですね。お客さんが、この界隈に来てくれたらいいんです」とサービス精神は旺盛だ。

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