長期出張から帰ってきたら「自宅が解体されていた!」 築50年の平屋…まさかの隣家との取り違え 衝撃トラブルの補償は?【不動産鑑定士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

築50年の平屋に住むAさんは、海外にも拠点を持つ企業に勤め、長期出張で海外へ出かけることが多い会社員です。いつものように1カ月のベトナム出張を終えて帰宅すると、そこには驚きの光景が待っていました。自宅の平屋の一部が解体されてしまっていたのです。

実は、Aさんが住む家の隣にも、同じような平屋が建っていました。そこは以前から空き家で、老朽化が進んでいたため、解体されることになっていました。Aさんも事前にその話は聞いていましたが、「解体は長期出張中だから騒音は気にしなくていいだろう」と軽く考えていただけでした。まさかこんなことになるとは思ってもいませんでした。

自分の家が一部解体されてしまったのですから、当然、損害の補償を求める必要があります。では、その損害額はどのように査定されるのでしょうか。実際に誤って解体された家の査定を行った経験を持つ、株式会社たてやま総合鑑定の立山壮平さんに話を聞きました。

ー誤って隣家が解体されてしまうということは起こりうるのでしょうか

これまで不動産鑑定士・一級建築士として仕事をしてきたなかで、隣家が誤って解体されていたというケースがありました。その時は、不動産会社の人が現地に到着するのが遅れて、電話で解体業者に指示をしたところ、隣の家が似た建物だったので解体業者が誤って解体してしまったというものでした。この時の大きな原因は、実際に解体する建物を事前に見たことがあったのは不動産会社の人だけだったので、解体業者は実物を把握していなかったことです。

工事の最中に元請が到着し、間違えて隣家を解体してしまっていることに気づき、すぐに工事を中断したのですが、すでに隣家の一部が解体されてしまっていました。

ー誤って解体された家はどのように算定されるのでしょうか

実際に壊された部分を調査して、写真や技術資料を作成します。柱の状態や壁材などを確認して、同じ仕様で原状復帰させるにはどれくらい費用が掛かるかを算定しました。しかし残念ながら解体前の状態は完全には分かりません。解体された家に住んでいた人は、解体により家が傾いたと主張されていましたが、その時は、柱が無事だったこともあり、傾きは解体工事が原因ではないと結論付けました。

ー算出された金額をもとに損害賠償がおこなわれるのですね

いえ、算出された金額ですんなりと賠償がおこなわれるとは限りません。通常は解体された家の家主さんと、不動産会社、または解体業者との間で話し合いが実施され、そこで解決することが多いです。

ただ私が関わった案件では、話し合いでは解決しませんでした。解体ミスの原因が不動産会社にあるのか解体業者にあるのか、責任を押し付け合ってどちらが支払うのかが確定しなかったのです。

話し合いでは解決せず、家主さんも弁護士を立てて調停となりましたが、そこでも結論は出ません。ついには裁判で決着をつけようということになり、現在も係争中となってしまっています。

Aさんのケースでも、不動産会社と解体業者の責任のなすりつけ合いは起こるかもしれません。その場合は弁護士などの専門家に相談するといいでしょう。

◆立山壮平(たてやま・そうへい)不動産鑑定士・一級建築士 大阪府茨木市を拠点に「土地・建物の身近な相談窓口」として活動。週1回のジョギングや登山などの写真をSNSで発信するなど、アクティブな面もチラ見せ中。

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