王国健在 数字が証明
「サッカー王国だった静岡県が没落したのはなぜなのか」。ユースク取材班に寄せられた質問だ。なるほど日本代表に選ばれる出身選手が減り、ただ今開催中の全国高校サッカー選手権で静岡学園が四強入りこそしたが、近年の代表校の成績はふるわない。昨年はジュビロ磐田がJ2に降格してしまった。が、本当に没落してしまったのか。そもそも「王国」とは何なのか。浜松市出身で高校までサッカー少年だった記者が、客観的なデータを使い、検証してみた。
まずは「王国」候補を絞り込もう。条件として考えたのは三つ。
(A)Jリーグチームが複数ある。
(B)J発足以降、高校サッカー選手権で代表校が複数回優勝している。
(C)高円宮杯プレミアリーグに複数のチームが参加している(いずれも二〇一九年十二月時点)。
サッカー文化の根幹といえるJリーグと高校サッカーに着目した。プレミアリーグは冬の選手権に比べ、注目度が高いとは言えないが、クラブチームも含めた高校世代の日本一を決める戦い。チーム数は世代の実力や層の厚さに直結する。
「王国」を名乗るからには二つはクリアしたいところだが、「静岡」と千葉、福岡がすべて、埼玉、大阪が二つクリアで王国候補に名を連ねた。
人材豊富 他を圧倒
さて、真の戦いはここから。日本サッカー協会(JFA)とJリーグが公表するデータをもとに、候補の五府県で人口あたりの数字を比べた。
(1)現役Jリーガー数(J1~J3、一九年十二月時点)
単純に国内最上位リーグにどれだけ選手を供給しているのか。静岡は人数でトップに立つのもさることながら、総数に占めるJ1選手の比率も41・6%と高水準。代表クラスこそ減少傾向だが、依然、レベルの高い人材を安定して供給している。
(2)チーム登録数
(3)選手登録数
小学校から社会人、プロまでの全チーム数と、サッカー協会への選手登録数は静岡がいずれも他府県を大きく引き離した。県協会の統計では地域による極端な偏りもなく、広く全域でサッカーが親しまれていることが分かる。
(4)指導者登録数
選手を育てる指導者の数はどうか。静岡は唯一の人口比0・1%超え。県協会の担当者は「講習への参加人数も全国的にみて多く、指導者層の意識の高さがうかがえる」と胸を張る。
(5)審判登録数
選手や指導者じゃなくてもサッカーに関わりたい-という人たちの数こそ、サッカーが「文化」として根付いている証拠ではないか。もちろん、静岡がトップである。
以上。静岡がすべての指標でトップという、記者にとっても予想外の圧勝で、「王国」が健在であることが証明された。
「静岡ひいきが甚だしい」「主観にまみれている」…など万が一、異論・反論があればユースク取材班までお寄せください。
(中日新聞東海本社)
(中日新聞「Your Scoop みんなの『?』取材班」から)
→中日新聞のウエブサイトは
https://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/yourscoop/list/CK2020010602000174.html
▼どなどな探検隊 パートナー協定について
まいどなニュースはオンデマンド調査報道の充実に向けて、北海道新聞、岩手日報、河北新報、中日新聞、東京新聞、京都新聞、中国新聞、神戸新聞、テレビ西日本、エフエム福岡、琉球新報と連携協定を結んでいます。「どなどな探検隊」に寄せられる調査依頼や内部告発のうち、取材対象地域外に関するものなどは各社と情報を共有。北海道新聞の「みんなで探る ぶんぶん特報班」岩手日報の「特命記者?あなたの疑問、徹底解明?」、河北新報の「読者とともに 特別報道室」、東京新聞の「ニュースあなた発」、中日新聞の「Your Scoop みんなの『?』取材班」、京都新聞の「読者に応える」、神戸新聞の「スクープラボ」、中国新聞の「こちら編集局です あなたの声から」、琉球新報の「りゅうちゃんねる~あなたの疑問に応えます」の記事を相互交換し、新聞や自社のウェブサイトに随時掲載します。