「かわええ」六本木発で世界初のハリネズミカフェが人気~実はモグラの近種、針の正体は?海外からも注目

北村 泰介 北村 泰介

 2020年は子(ね)年。ネズミといえば、「夢の国」の有名キャラを思い浮かべる人が多いだろうが、近年、ハリネズミの人気が高まっているという。SNSにはペットとして飼う人たちの動画投稿であふれ、グッズも販売されている。もっとも、日本では「ネズミ」と名付けられているが、生物学上はモグラに近い「食虫目ハリネズミ科」。英語では「ヘッジホッグ」(生垣のブタ)といい、欧州などでは「幸運を運ぶ動物」として親しまれているという。だが、世界初の「ハリネズミカフェ」が誕生したのは東京だった。パイオニアとしてブームの火付け役となった「HARRY(ハリー)」六本木店を訪ねた。

 店内には約20匹のハリネズミがいて、来店客は3匹ほどが入った樽型のケージに向き合い、手袋をして触れ合う。樽の底には細かく砕いた国産のクルミ殻が敷かれ、これは吸水性と脱臭効果があり、排せつ物を乾燥させる。その中でハリネズミたちは「食虫目フード」を食べ、動き、寝る。基本料金は30分1300円(税抜)。ここで飼育のノウハウを学び、相性が合えば、ペットとして購入もできる。

 記者が対面した3匹はそれぞれ性格が違った。手に取ろうとすると暴れる元気者もいたが、まずは穏やかな生後半年、体長約20センチ、体重約300グラムの〝子〟を手に取った。手のひらで安心して寝ている、その背中の針を流れに沿ってなでると痛くはないが、逆になでれば、やはりチクチクする。

 同店の責任者であるスタッフの齋藤麻由さんは「複数の毛が固まって針の形になっています。攻撃の意味で刺すとか、ヤマアラシのように飛ばすというようなことはありません。あくまでも身を守るための針です」と説明。対照的に腹部はモフモフと柔らかい。このギャップがたまらない。

 体の色も違う。齋藤さんは「白と黒のソルト&ペッパーというカラーがスタンダードで、あとは柔らかい印象のシナモン(体がベージュで鼻がピンク)、赤目で真っ白い針のアルビノなど。この(記者が手にした)子は『牛さん』のイメージのパイド(PIED)です。(購入価格は)3万から10万円までで、価格の違いはカラーや性別によります。寿命は平均5歳くらいです」と解説した。

 一方で「販売しているので店内で名前は付けられないのです」と明かす齋藤さん。確かに名付けると愛着がわいてしまう。「私は個人的に家で飼っていますが、名前を合図として覚えてくれて、呼ぶとトコトゴ出て来てくれたりします。基本的に夜行性ですが、日中も寝たり起きたりを繰り返している。好きな時に起きて好きな時に寝る生活スタイルですね」。そんなタイプの小動物だ。

 店内には欧米系の親子連れ、アジア系の団体客など人種や国籍も様々だった。齋藤さんは「ハリネズミを触りたくても自国では触る機会のない人が当店に来られています」。インバウンド効果もあるのではないか。いわゆるVIPでは、昨年11月に英国人俳優のオーランド・ブルームと米国人歌手のケイティ・ペリーが来店。12月には来日公演を行った米国の世界的ロックバンド「KISS」のポール・スタンレーが訪れ、ハリネズミと戯れる画像が同店のツイッターにあがった。

 「元々はウサギカフェから始まって、ハリネズミを展示するようになったのは、4年ほど前(16年頃)。明確な飼育方法も確立していない時期からのスタートでした。ハリネズミをフィーチャーし続け、ペットとしての認知度がようやく上がってきました」。現在は、原宿3店舗と横浜店の計5店舗でハリネズミカフェを展開する。齋藤さんは「ブームだけには終わらせず、ハリネズミさんの魅力を一人でも多くの方に発信していきたい」と意欲的だ。

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