年末になると、新年の干支にちなんだグッズが登場するが、大手玩具メーカーのタカラトミーでは2020年の子(ね)年にちなんだ玩具「干支アニア 子(ハリネズミ)」(税抜600円)を発売した。日本では「ネズミ」と名付けられているが、生物学上、ネズミ目(もく)ではなく、実はモグラの親戚のような「食虫目ハリネズミ科」。近年、ペットとして人気急上昇という背景もある。都内の同社を訪ね、自宅でハリネズミを育てている担当者らに開発の背景や特徴、魅力を聞いた。
ハリネズミは英語で「ヘッジホッグ」。意味は「生垣のブタ」。この動物に「ネズミ」と名付けた国は世界でも日本ぐらいではないかといわれ、「ネズミのようでネズミじゃないが、やっぱり名前はネズミ」という何だかファジーな存在なのである。
同社では「立体動物図鑑」というコンセプトの動物フィギュア「アニア(アニマルアドベンチャー)」シリーズを13年から発売。目の不自由な子どもたちの「共遊玩具」でもある。15年から「干支アニアシリーズ」が始まり、今回は第5弾となる。
企画開発本部ニュープロダクト企画開発室・同開発課の高久晴子主任は今回の原型を15年に開発。12年からハリネズミと生活を共にし、体感した特徴を的確にとらえて表現した。
高久さんは「モチーフにしたのは『ヨツユビハリネズミ』で、アフリカ原産といわれ、ペットとして認可されているのはこの種類です。体のサイズに比べて足が極端に細くて短い。そのアンバランスさもかわいらしさの1つ。背中にびっしり針が生えて、お腹はフワフワの毛というギャップも大きい特徴。目を閉じた時に、背中の針とお腹の柔らかい繊細さの違いが触って感じられるような造形を意識しました」と説明した。
今回、彩色を変えた干支アニアを作った同本部の五月女友里衣さんは「女性の方が玄関先に置かれることが多いので、ネズミよりハリネズミの方が映える。俗説ですけど、欧州ではハリネズミが幸福の象徴とされていて『庭先で見つけるとラッキー』ということで『福』のイメージにも合う」と背景を明かした。
SNSで「ハリネズミ」を検索すると、飼い主が撮影した動画であふれていた。笑っているような顔もある。「表情は豊かです。大きな鳴き声をあげたりせず、穏やかな性格」と高久さん。7年間、家族として接している経験を元に、その特性を解説いただいた。
「人間が近づくと隠れたり、針を立てる子がいれば、人懐っこい子もいたりで個体差があります。一概に『飼いやすい』とは言い切れないですが、飼い主さんが愛情を持って接すると針を立てずに懐いてくれることも。体長も個体差がありますが、だいたい20センチ前後。体重も個体差があり、今うちで飼っているナナコという子は350グラム前後。だいたい300~600グラム前後が一般的で、大きい子は700グラム以上とか。ナナコは2歳で、人間でいうとだいたい30代ぐらいの妙齢。寿命に関しては有名なインスタグラマーの方が取られたアンケートによると、平均3歳前後でした。最初に飼ったナツコという子は5歳で亡くなりました。すぐお別れが来てしまう」
「お別れ」という言葉にしんみりした。「生」の時間が短く限られているからこそ、いとおしさも増す。
ところで、ブームの現状は?「15年頃から徐々に人気が高くなり、ここ数年は飼っている方が爆発的に増えているようです。ハリネズミの写真がメインの有名なインスタグラマーでフォロワーが40万人以上といった方がいらっしゃったり。ペットショップでも普通に販売し、ハリネズミカフェもある。雑貨屋さんにはポチ袋や年賀状に使える子年用のポストカードもハリネズミで商品化されていました」。そう教えてくれた高久さんの耳にはハリネズミのイヤリングが揺れていた。
同社によると、複数購入して「お年賀」で配る人も多いという。新年を「ハリネズミ年」として迎える人たちがいる。