鉄は国家なり。今ほとんど聞くことがなくなりましたが、ドイツの首相であったビスマルクの言葉です。鉄鋼産業がどれくらい栄えているかで、国の力がわかるというものでした。鉄は今では構造材料として用いられることが多いですが、江戸時代以前ですと、鉄といえば刀でしょうか。
子供のころテレビでルパン三世にでてきた石川五ェ門が使う斬鉄剣がどんな硬いものでも切れるというのを見て、すごいなあと本当に信じていたのは、今では笑い話です。
さて、鉄はどうやって作るのか?これは化学反応を利用します。鉄の原料である鉄鉱石のほとんどは鉄と酸素がくっついたものですので、この酸素を取り除いてやることにより鉄が作られます。この取り除くのに使われるのが炭素です。
先日、吉野彰さんのノーベル賞の授賞式がありましたが、その化学賞の対象となったリチウムイオン電池のマイナス極にも炭素が使われています。なかなか炭素は万能ですね。本題にもどって、炭素を使って、鉄鉱石の酸素を取ってやると鉄ができます。化学の用語で言うと、鉄鉱石を炭素で還元して鉄を作るということになります。
話は少し変わりますが、高校生のとき、世界史を選択していました。そのときに習った一つが、『紀元前15世紀くらいにヒッタイト王国というのが現在のトルコを中心に繁栄していて、この王国では鉄器を使っていた』ということです。
このときは全く疑問を持たなかったのですが、大学の化学の授業で、鉄の作り方を教えるときにふと思ったのが、紀元前15世紀に鉄鉱石を炭素で還元?って、本当にできたのか?ということです。これは歴史的事実ですので、鉄を作っていたのは間違いなく、鉄の作り方は“還元反応”を使わないといけません。では、どうやってです。
鉄鉱石は鉱山から採れます。炭素は天然に埋まっているのがあります。もしくは、木を蒸し焼きにして、木炭を作ってこれを使ったのかもしれません。あとは、高温が必要なので、炉を作ることが必要ですが、これもそれほど難しくはないように思います。ただ、これはすでにいろいろな知識があるのでわかることですね。鉄を偶然作るというのは考えにくく、天才がいたのでしょうねえ。古代文明の素晴らしさに感動を覚えました。