吉野彰氏(旭化成名誉フェロー)がノーベル化学賞に選ばれ、リチウムイオン電池の存在は改めて注目を浴びることになった。吉野氏と同じ京大大学院工学研究科出身で、リチウムイオン電池に続く次世代電池の最先端研究に取り組む京大・安部武志教授は、吉野氏と複数の関連書籍を共著するなど、親交が深い。デイリースポーツの連載コラムで、吉野氏に祝意を述べ、リチウムイオン電池の現況と今後をつづった。
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祝!吉野様。やりました!ノーベル化学賞。リチウムイオン電池の開発で、吉野さんが受賞されたのは、まだ記憶に新しいですね。日本発のリチウムイオン電池ということで、日本人の複数受賞もあり得るかと思っていましたが、さすがにそこまではいきませんでしたね。
小型ビデオカメラ用電池として開発されたリチウムイオン電池はすぐに携帯電話、ノートパソコン用電源として使用されるようになりました。1991年に市販された当初はそれほど電池容量が大きくなかったのですが、年々技術が進み、ノートパソコンが長時間使えるなあと思ったのが15年前くらいです。そこから、さらに改良を重ねて、電気自動車(EV)用電源となり、EVの量産が始まったのが10年前です。このあたりから、リチウムイオン電池の開発に対してノーベル賞が贈られるのではと騒がれるようになりました。この10年間ずっと期待をしていたので、今年の受賞はようやくといった感じです。
時間を気にすることがもうひとつありました。今回の受賞で絶対に外せなかったのがグッドイナフ先生です。リチウムイオン電池のプラス極の材料を見つけたられたのが1979年でいまから40年前。そのときのグッドイナフ先生は57歳です。なので、今は97歳で過去最高齢の受賞となりました。
リチウムイオン電池は私の専門分野でもありますので、リチウムイオン電池とは…とやりたいところですが、それはどこかでググってもらうことにしまして、吉野さんの話に。日本人の企業の方が受賞されたのは、今回で2人目です。企業の研究者は論文を書くよりも特許を出すことが優先されます。吉野さんがリチウムイオン電池の原型となった特許を出されたのが1985年。吉野さんが大好きな阪神タイガースが日本一になった年ですね。このとき、アメリカ特許も取られています。この特許が今回の受賞につながっていますので、ノーベル財団はよく調べているなあと思いますね。