「紫合」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩が日本人の難読名字を紹介します。
◇ ◇
知らない限りは絶対に読めない難読名字。ただし、地名がルーツとなっており、「紫合行き」というバス路線もあるため、その地域に住んでいる人には問題なく読めるはずだ。
紫合という地名があるのは兵庫県猪名川町。これで「ゆうだ」と読む。
ここには地名の由来が伝わっている。この付近はもともと「ゆうだ」という地名だった。そして、近くを流れる猪名川の靄が夕方には紫色の雲となり、西鏡寺の境内にあった松の大木に重なり合って漂っていたことから、この松は“紫雲の松”と呼ばれていた。その松が枯れたとき根元に光るものがあり、掘るとそこから薬師如来が出現したという。そのため、本来の地名である「ゆうだ」に「紫色の雲が重なり合う」から「紫合」という漢字をあてたのだと伝えている。
おそらく、そもそもの地名である「ゆうだ」とは「結の田」という意味だろう。結(ゆい)とは集落における共同作業のことで、村で管理する田を「ゆうだ」と名付けたと考えられる。
やがて、地名が「ゆうだ」となって「紫合」という漢字があてられ、さらにここに住んだ人が「紫合」を名字にしたことから難読名字となったと思われる。