会社から支給される手当といえば、「残業手当」「休日出勤手当」「住宅手当」「単身赴任手当」…などが思い浮かびますが、東京に聞き慣れない手当を出している会社があると知り、訪ねてみました。
ファーレイ株式会社は主に不動産会社向けのシステム開発や販売、広告の制作・運営などを手掛ける会社。オフィスは東京都中央区晴海にそびえ建つツインタワーマンションの上層階にあり、「今時のIT企業」といった印象ですが、なんと「猫手当」制度を設けているというのです。
「保護猫を飼っている社員に、一人当たり月5000円を支給しています。2000年の会社設立当時、立ち上げメンバーの一人が猫を飼っていて、会社に連れて来ることになったんです。それをきっかけに、僕も含めて猫を同伴出勤する社員が増えた。猫が会社で食べるごはんは経費で買っていいことにしていたんですけど、その流れの中で、10年くらい前に『猫手当』を作りました」
そう話すのは代表取締役の福田英伸さん。猫手当の支給条件に「保護猫」とあるのは、福田さん自身がそうした問題に関心があり、「猫助け」したいと考えているから。飼っている猫3匹はすべて元保護猫で、猫にやさしい会社づくりをすることで、猫の支援へとつなげているのです。
実際に猫手当の支給を受けている社員にも話を聞いてみました。2匹の兄弟猫を同伴出勤している細川真樹子さんは、「猫は犬ほどお金が掛からないので、月5000円は大きいですね」と笑顔。片道1時間半掛けて電車通勤しているそうですが、それでも自宅に置いて来るよりは安心だし、猫たちも会社で自由気ままに、のびのび過ごしています。
そういえば、どうやって保護猫だと証明するのでしょうか?
「みんなでそういう(里親探しの)サイトを見たり、譲渡会に行った話をいつもしているので、特に証明するものがなくても、保護猫を迎えたことは分かります」(細川さん)
7名の社員は当然ながら全員、猫好き。いま飼っている人も、これから迎えようとしている人も、保護猫情報にアンテナを張り巡らせているのです。
ペット関連企業でもないのに猫の同伴出勤を認め、さらに猫手当まで支給しているとなれば、話題性は十分。過去にはAP通信やロイター通信の取材を受けたこともありました。会社のTwitterやInstagramなどSNSを通じても認知度は上がり、「求人広告費を掛けなくても求人できる。猫がリクルート活動をしてくれていますね」と福田社長。インターンシップ希望者は後を絶たず、会社説明会も大盛況。中には「高校のときからTwitterを見ていて、就職活動のときには絶対応募しようと思っていました」という大学生までいたと言います。
「猫とはたらくIT企業」がどれだけ有名かは、今年6月に転職情報サイトdoda(デューダ)が発表した「転職人気企業ランキング2019」のIT・通信部門で16位に入ったことからも分かります。
「1位はアップル(Apple Japan)、2位はソフトバンク、3位は日本マイクロソフト。4位以下も錚々たる大企業ですよ。そんな中で16位に入ったんですから、まさに猫効果ですよね」(福田社長)
その他にも「社内の雰囲気が良くなる」「猫きっかけでお客さんが増える」など、その効果は計り知れません。キーボードに飲み物をこぼされたり、備品を壊されたり…ハプニングは日常的にありますが、それも「SNSのネタになる」と笑い飛ばせる程度。「同伴出勤を見直そうと思ったことは一度もない」(福田社長)そうです。
最後に、福田社長から「これだけは書いておいてください」とリクエストがありました。
「猫好きで“優秀な”人材を求めています!」
そりゃあ、猫が好きというだけでは困りますよねぇ。