病気の私を癒してくれた保護猫 テレビや写真展でタレント猫としても活躍

渡辺 陽 渡辺 陽

むぎくんは、団地の敷地内で野良猫が産んだ子猫だった。当時、病気になって、ほとんど動くことができないような生活を送っていたむぎママさんは、縁あってむぎくんを迎えたことで、薬を飲んで治療したら普通に生活できるようになるまで回復した。

野良猫が出産

栃木県に住むむぎママさんの近所に団地がある。2016年6月、そこに住み着いていた野良猫が3匹の子猫を産んだ。母猫は、もともと誰かが飼っていたが、敷地内に捨てられた猫で、団地の人がエサをあげるなど世話をしていたそうだ。

むぎママさんのお母さんのところに「引き取り手が見つからなければ、子猫は保健所に連れて行かなければいけないかもしれない」と知り合いから連絡があった。むぎママさんが買い物の帰り、お母さんから連絡があり、近くの商店で一時預かっていた子猫を見に行くことになった。幼い頃から犬や猫と一緒に生活してきたので、大好きだった。既に1匹の子猫は譲渡されていて、母猫と子猫が2匹残っていた。1匹の子猫は、別の人がほしいと言った。むぎママさんは、残る1匹の子猫を抱いてみた。

猫のおかげで元気になれた

とても大人しい子猫だった。もう1匹の子猫は活発に動いていたが、むぎママさんが抱いた子はうずくまっているような感じで、ピタッと身を寄せてきた。「もう離せないと思いました。主人は、猫と暮らすのが初めてだったので、飼うからには最期まで世話をしないといけないと慎重だったのですが、この子がたった1匹残ってしまったらかわいそうだと説得しました」

6月11日、むぎくんは家族になった。じつは、むぎママさんは病気を患って退職、ほとんど家に引きこもるような生活をしていた。「しゃがむのもしんどいくらいつらい時期で、ほとんど家で寝込んでいたのですが、むぎが来てからは『お世話をしないと』と思って動けるようになったんです。むぎはみんなに招ぎ猫だと言われていて、恩人のような感じです」。薬を飲んで治療して、普通に生活できる毎日。「精神面が全然違います。自分のことで精一杯だったのですが、この子を自分で助けたいと思いました」

むぎママさんの社会化教育

むぎママさんは、むぎくんが家に来た当時、トイレができたかどうか夜中に何度も様子を見に行き、ごはんも食べ終わるまでずっと見守っていた。「当時は子供がいなかったのですが、『この子を守らないと』と思いました。いまでも我が家の長男だと思っています」。むぎくんは、最初は本当に大人しくて飼いやすい猫だったが、すぐにものすごく活発でやんちゃな子になった。むぎママさんは、足に噛みつかれて傷を負うなど、たびたび怪我をした。「社会化されていなかったんですね。素手や素足で接しないようにしました。手に咬みついてきたらパペットをはめて遊ぶようにしました。咬める場所を作らないことが大事です。そのうち咬むことも引っ掻くこともなくなって穏やかな子になりました」

タレント猫に

むぎくんは、タレント猫としても活動している。ある時、タレント事務所の「研究生募集」という広告を目にして応募してみると、「タレントとして事務所に所属してみませんか」という連絡がきた。

「ZIP」(日本テレビ系)などのテレビ番組にも出演し、都内で開催される写真展にも、むぎママさんが撮影した写真が展示された。「猫の雑誌などの表紙を飾るのは、マンチカンやペルシャなど血統書付きの子が多いんです。でも、むぎのような保護猫だって可愛い。そのことをたくさんの人に知ってもらえたら嬉しいんです」と、むぎママさんは言う。

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