東京の名うての蕎麦店主が目をつけたのは、京都郊外の元教会…山海の旬菜が味わえるレストランに

沢田 眉香子 沢田 眉香子

 学校、庁舎などが統廃合されて空いた建物のリノベーション、「モト〇〇」の店に、わざわざ出かけたい名作が多い。たとえば元郵便局のカフェ「コリシモ」(兵庫県篠山市)、元幼稚園の天然酵母パン工房「タルマーリー」(鳥取県智頭町)、元幼稚園の農家レストラン「且緩々(しゃかんかん)」(兵庫県姫路市)などが、遠方からの客でにぎわっている。そして京都の綾部市でいま、クチコミで食通を集めているのが、元綾部カトリック教会のレストラン「GET ME TO THE CHURCH」だ。

 駅から徒歩圏のレトロな教会。そこは果たしておごそかムードかゴス系か?と思いきや、「店内」には意外やカラフルなミッドセンチュリーや北欧家具がゆったり並んでおり、祭壇だった場所には名器スタインウェイのビアノとサキソフォンが。ここでライブもおこなわれるとかで、かつて賛美歌が聞こえた大空間には、レコードでかけるジャズが響き、薪ストーブの温もりに包まれる。

 これはなかなかの趣味人、とお見受けしたご主人・宮野晋さんは、東京・阿佐ヶ谷の蕎麦懐石「みや野」の店主。京都市内で店舗を探していたところ、地元不動産店がコワーキングスペースとして保有していたこの物件に出合った。教会が役目を終えたのは信者さんの数も減ってしまったという、人口減に悩む地方都市ゆえの事情があった。しかし、「市内から電車で1時間。山手線一周くらいの時間じゃないですか?」という宮野さんの東京人的距離感覚は、言われてみれば目からウロコ。しかもここ綾部は、近海ものの鮮魚からジビエまで、海と山の幸に手がとどく食材パラダイスでもある。同店の料理は、そんな豊かな地元食材を生かして宮野さんがつくる、即興演奏的おまかせコースだ。

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