全国で唯一、駅ホームにポツンと「ポスト」がある謎 100年近くたってもバリバリ現役です

樺山 聡 樺山 聡

 こんなところにポツンとあるなんて。駅ホームに立つ郵便ポストである。普段から通勤・通学でこの駅を使う人々には見慣れた光景のようで、みんな素通りしていくが、実は全国でもここだけでしか見られない珍景だった。テレビで紹介されて、にわかに脚光を浴びたポストはどのようにして生まれたのだろうか。

 「この写真が撮影されたのは、どこの駅でしょう」。11月にテレビのクイズ番組で紹介されると、ツイッターで話題になった。「たまに使うけど知らんかった」「日本郵便勤務なのに初めて知りました」。テレビでは駅ホームに郵便ポストがあるのは全国唯一と紹介されたため、その存在を知っていた人も「京都駅だけやったんや」と驚いた。

 そう、正解はJR京都駅。早速、駅に行くと、郵便ポストは在来線の2・3番線と4・5番線のホームに一つずつあった。ポストの口の下には収集時刻が書かれており、れっきとした現役のポストであることを物語る。

 京都中央郵便局によると、確かに郵便ポストが駅ホームに設置されている例は確認されている限り全国で京都駅のみという。

 しかし、どのような経緯で設置され、なぜ京都駅だけ残っているのかについては京都中央郵便局もJR西日本も「資料が残っておらず、分からない」という。

 何とも謎に包まれたポスト。何とか手掛かりはないかと探してみると、京都新聞の過去の記事にそれらしいものが見つかった。

 その記事によると、およそ100年前の1920(大正9)年、京都の玄関口である旧国鉄京都駅内に「京都駅郵便室」が開設された。当時、郵便の輸送は列車によるのが主流で、駅前にある京都中央郵便局が郵便作業にあたるためだったという。大勢の人々が行き交う駅と郵便は「直結」していた。ホームから乗客が手紙やはがきを出せるよう列車の窓下に投かん箱をつけたり、列車内で郵便職員が手紙の仕分けをしたりしていたとされる。ホーム上の郵便ポストは、この頃の名残と記されている。

 やがて郵便物の輸送手段は鉄道から自動車に。それとともに、全国の主要駅のホームにあった郵便ポストは撤去され、京都駅のポストも存続が危ぶまれた。ところが、京都駅のポストはなぜか人気が高かった。「乗客による利用率が高い」と、京都中央郵便局が残すことに決めたと、その記事には記されていた。

 京都中央郵便局によると、個別のポストの利用量については公表していないとのことだが、「今も残しているということは相当量の利用があるということ」という。京都駅ホームにポツンと立つ郵便ポストは、バリバリ現役なのだった。

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