歩けなくなった認知症患者が2週間で歩いて退所する老人ホーム…「心をおこす」って?

桑田 萌 桑田 萌

 看護師と介護士、職種が違うだけで、なぜこうも利用者の反応が違うのか。そもそも、利用者と介護士は、いつもこんなギスギスした空気の中で過ごしているのか…。大石さんの中で「この現状を変えたい」という気持ちがわき上がってきたという。

「考えたのは、どうすれば福祉の現場が豊かになれるのか。そのためには、まず介護士が幸せになれる現場が必要だと思いました。看護師とともに在宅ケアを行うためのマインドを整え、利用者と少しでも笑い合い、ともに幸せと思える時間をつくることが大事だと気づいたんです」

 多くの認知症患者が入所する中、2週間から1ヶ月の間に「在宅復帰」するケースも多くある「つむぐ」。入所時は黄疸が出て、車椅子生活しかできなかった利用者が、施設を出る際には自らの足で立ち、歩いて自宅に帰っていくという。

「入所中、点滴や薬のチェックなどの医療的行為はもちろん行いますが、それ以上に大切なのは、利用者様の心を起こすこと。取り戻してもらう関わりをしています。毎日催しやイベントごとを行うのではなく、日常の中で、利用者様の『普通の生活をしたい』という願いを叶えるケア。これが重要なんです」

 利用者と過ごす1分1秒を大切にしたい、という大石さん。ヒーリングやセラピーを用いたケアなどの様々な角度から「利用者の人生を豊かにしたい」と願う看護師のサポートも行っている。

「様々なケアは、利用者が良い人生を送るための可能性になります。看護師の視点から介護の現場を豊かにしていければと思います」

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