歩けなくなった認知症患者が2週間で歩いて退所する老人ホーム…「心をおこす」って?

桑田 萌 桑田 萌

 それを果たしている大きな理由の一つが、介護士と看護師が手を組んで行うケア。介護士と看護師が同じ施設で働く形は決して珍しくないが、「つむぐ」が他の施設と違うのは、「使命」を明確にしながら職種の連携を目指している点だ。

 「そもそも介護士と看護師では、その職業柄『守るべきとされているもの』が違うんです」と大石さん。介護士は「生活」を守るが、看護師は「命」を守るのが使命であるため、負うリスクの大小も差がある。その違いを受け入れながら、介護士と看護師の心を可能な限り合わせようとしているのが、大石さんが注力していることだ。

「利用者が『ご飯が食べたい』というと、看護師は誤嚥を気にして躊躇します。でもうちの老人ホームでは、利用者の望む生活を叶えたいと思っているので、食べいただきます。そのために、安全に食事ができるよう、看護師が介護士をサポートする。そんなスタンスをとっています」

 もともと看護師だった大石さん。急性期病院から福祉の現場に移った際、カルチャーショックを受けたという。

「初めて福祉の現場に入ったとき、看護師の私は白衣を着ていました。すると施設の利用者は私を『看護師さん、看護師さん』と拝むんです。でも、介護士さんには『ちょっと、これやってよ!』と態度がガラリと変わる。介護士さんも『ちょっと待ってって言ってるでしょ!』と怒る」

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