近所のマンションにある、24時間使える“住民専用ゴミ捨て場”…勝手に捨てたらどうなる? 実は法律違反です【弁護士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

郊外の一戸建てに住むAさんは、成人して家を出た子供がこれまで使っていた部屋を大掃除しました。押し入れから出てきた思い出の品に懐かしさを感じながら、不要になったものをゴミ袋に入れていきます。

大事なものだけを残し、処分した物の量は40リットルのゴミ袋5袋分でした。これだけの量を片付けてスッキリしていたAさんでしたが、ゴミの日が過ぎたばかりだったのを思い出します。次のゴミの日は3日後だったものの、少しでも早く片付けるために近所のマンションのゴミ収集所にゴミを運びます。

そのマンションには24時間ゴミ出しができる収集所が常設されており、住民にのみ利用が許されていました。Aさんはマンションの住人ではないものの、このマンションに住む友人がいるため、特に悪いことをしている意識もなくゴミ収集所を使うことにしました。

自分が住んでいるわけではないマンションにゴミを捨てるのは、問題になるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに伺いました。

ー家庭ゴミを近所のマンションに持ち込むと罪になるのでしょうか

Aさんの行為は、廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に反していると考えられます。廃掃法の第25条第1項第16条には「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」と書かれているのです。Aさんは住民にしか認められていない場所にゴミを捨てたことから「みだりに廃棄物を捨てた」と見られる可能性が高いです。

もしもマンションの管理組合がAさんの不法投棄を問題視し、警察に通報されてしまった場合は有罪と判断されてしまうでしょう。

ーAさんにはどのような罰が科せられるのでしょうか

廃掃法の第25条第1項第14条では「不法投棄を行った者は、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはこれの併科に処せられる。」と書かれています。有罪になれば、Aさんはこの範囲での罰を受け前科がついてしまいます。

前科を避けるには管理組合に謝罪し、示談金を支払って示談書を作ってもらうのがいいでしょう。示談をしておけば担当検察官によって不起訴処分となり、罰金を回避できるかもしれません。

ーゴミ出しでほかに気を付けるべきケースはありますか

所定の場所にゴミを捨てたとしても、決められた日以外であれば同様の罪に問われる可能性があります。前日の夜にゴミを捨てる人もいるとは思いますが、厳密には「みだりな廃棄」に当てはまると考えられます。ゴミのためだけに時間を割くのは苦痛かもしれませんが、正しく廃棄するようにしましょう。

ー実際にAさんと同様のケースで有罪になった案件はあるのでしょうか

調べてみたところ、実際に有罪になったという判例は確認できませんでした。そもそもマンションなどの私有地にゴミが不法投棄された場合、管理組合が警察や自治体に連絡を入れることで問題が表面化されます。しかし、よほど量が多い場合や頻度が多い場合などの悪質なケースでなければ、警察に通報されないのかもしれません。実際に示談で解決したケースの有無も不明です。

ただ、不法投棄は違法であることは各自治体のHPなどでも警告されています。判例が少ないからといってバレないと思っていると、警察のお世話になるかもしれません。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

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