ビートルズなくしてCTスキャンはなかった…意外すぎる関係

ドクター備忘録

松本 浩彦 松本 浩彦
日本初公演で、1万人のファンの前で演奏するビートルズ=1966年6月、日本武道館(提供・共同通信社)
日本初公演で、1万人のファンの前で演奏するビートルズ=1966年6月、日本武道館(提供・共同通信社)

 今や当たり前のように受けられるCTスキャンという画像診断装置。この機械が医学の進歩に与えた影響は計り知れません。MRIも優れた検査装置ですし、最近は3D-CTなど恐ろしいほど鮮明な画像診断装置も開発されていますが、すべて最初のCTの設計思想が元になっています。

 だからやはりCTを最初に開発した技術者がすごいのです。そしてそのエンジニアは数年後にノーベル医学生理学賞を受賞しています。でも実は、CTの画像解析理論そのものは第二次大戦直後に完成していました。ただし、それを実現するには天文学的な開発費がかかることも…。

 ところが1960年代の終わり、イギリスのEMIという会社はお金が余って余って困ってた。ものすごく儲かってるのに税金に取られるだけなら、絵に描いた餅(もち)でもいいから人の役に立つ研究に投資してやれ。そう考えて莫大な開発費を援助します。そして72年に早くもCTは完成してしまうのです。EMIがなければ、現代医学は少なくとも30年は遅れていたでしょう。

 ところで、EMIって何の会社でしょう。ご年配の方ならピンとくるかも。そう、レコード会社です。所属するミュージシャンは「ビートルズ」。つまりビートルズが稼いだお金の遣い道に困って、芽が出そうもない研究に大金をつぎ込んだら、ヒョウタンから駒が出てきてしまったという話です。

 ちなみにCTが売れてお金が入ってきて、EMIはまた困ったそうですが、ビートルズなくしてCTスキャンはこの世に生まれていません。ビートルズがこの世に残した最大の功績はCTスキャンだとも言われています。ビートルズとCTスキャンなんて、関係ないようでいて、意外なところで繋がりがあるものです。

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