「なぜ鉄道会社によって障害者割引に違いがあるのでしょうか」。神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に、聴覚障害のある兵庫県西宮市の男性(64)から、そんな質問が寄せられた。自宅から神戸方面に出掛けるとき、私鉄と地下鉄で割引があったりなかったりするのだという。取材をすると、当事者でも分かりにくい制度の複雑さが見えてきた。(田中真治)
男性は元教員で、聴覚障害で最も重い2級の身体障害者手帳を持つ。旅客運賃の減額を受ける際の区分は、障害が重い人に適用される「第1種」。退職後、月に何度か神戸に講義に行くようになり、運賃の割引がまちまちなことに気付いた。
阪神電車を神戸三宮駅まで利用しても割引はないのに、神戸市営地下鉄に乗り換えると半額に。ちなみに西神中央駅で乗り換える神姫バスも半額になる。
主な鉄道各社の制度を見ると、第1種の身体・知的障害者が介護者と同乗した場合、2人そろって運賃が半額になる。しかし本人単独の場合、地下鉄では半額になるが、JRや私鉄では「100キロを超える区間」との条件が付く。
障害者割引は旧国鉄が戦後に導入し、現行制度の基本となっているという。JR西日本は、介護者が必要な障害者は「1人分の運賃で利用できるよう5割引き」とする一方、単独での適用は「学生割引と同様、本人負担が高額となる100キロを超える区間に限っている」と説明する。
男性は介護者がいなくても移動でき、近距離の利用が多い。「区間制限を廃止してほしい」と訴えるが、JR西は「本来、国の社会福祉政策の一環として行うべきもの」として見直す計画はない。
神戸市営地下鉄の路線はもともと100キロ未満で、こうした距離制限はない。
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ただ、そこで男性の疑問はさらに深まる。路線が100キロ未満にもかかわらず、割引条件を101キロ以上とする鉄道があるからだ。例えば全線で48・9キロの阪神電鉄はその一つという。