8歳の少年が髪を2年間切らなかった理由 女の子に間違われても「待つ人いるから」

京都新聞社 京都新聞社

 子ども向けの医療用ウイッグ(かつら)を作るため髪を寄付する「ヘアドネーション」に、大津市の8歳の男児が約2年かけて取り組んだ。女の子に間違われるなど苦労もあったが、この夏、寄付ができる31センチ以上に伸びた髪を切った。「ちょっとでも困っている人の助けになったら」と願っている。

 膳所小3年のヘザー武運(ぶうん)君(同市中庄)。くせ毛がきれいにまとまることから、髪を肩までの長さにしていた1年生の秋ごろ、母直見さん(43)からヘアドネーションを提案された。

 当初は、その意味が分からなかった。直見さんから、病気で髪がない人のために寄付した「ママ友」の話を聞くなどしながら伸ばした。髪が伸びるにつれ、電車や飛行機で女の子に間違われることが増えた。切ってしまおうかと考えがよぎることもあったが、髪を待っている人のことを思い、伸ばし続けた。

 7月下旬、市内の美容院を訪れた。席についた武運君は「どきどきする」と、久しぶりのカットに少し緊張した様子。胸まで伸びた髪は10束に分けられた後に次々と切られ、あっという間に短髪になり、「軽い。涼しい」と笑顔を見せた。

 自分の髪の束に不思議そうに触れ、「プラスチックみたい」と感想を漏らすと、直見さんは「人工とは違う柔らかい髪だよ。きっときれいなウイッグになるよ」とほほ笑んだ。

 切った髪は、ウイッグを子どもに贈っているNPO法人「JHD&C(ジャーダック)」(大阪市)に送った。同法人によると、近年、寄付は特に10代で広がり、男性からも少しずつ増えているという。渡辺貴一代表(48)は「誰でも(病気などで)髪がなくなる可能性はある。自分のこととして捉え、ウイッグを使う人の気持ちを考えて取り組んでもらえたら」と話している。

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