東と西の本願寺が因縁の対決? 火種が再燃!といっても火消しの技で…

浅井 佳穂 浅井 佳穂
8年ぶりの雪辱に向けて練習を重ねる東本願寺のメンバー(京都市下京区)
8年ぶりの雪辱に向けて練習を重ねる東本願寺のメンバー(京都市下京区)

 プロ野球で言うなら「阪神対巨人」、学生野球なら「早慶戦」や「同立戦」だろうか。約400年前に分かれた浄土真宗の二大勢力、東本願寺と西本願寺による「伝統の一戦」が9月6日、京都市下京区で行われる。読経や説法で勝負するのかと思いきや、なんと消防訓練で雌雄を決するのだという。どういうこと?

 決戦の舞台は、下京区内の百貨店や金融機関など自衛消防隊を有する約60隊が出場する「下京自衛消防隊訓練大会」。消火器操法や屋内消火栓操法など4種目がある。その中でも小型動力ポンプ操法に出場するのは、2隊のみ。それが東西本願寺というわけだ。

 ここで本願寺の歴史をざっとおさらいしておこう。1570年、天下統一をもくろむ織田信長は当時の本願寺の拠点、大坂(現在の大阪)の石山本願寺を攻める。10年以上にわたる長い戦いの末、石山本願寺は信長と和議を結ぶ。

 この際、徹底抗戦を主張し、支持した僧侶や門徒たちが東本願寺の教団を形作った。一方、和議支持派の人たちが現在の西本願寺の教団を形成した。1591年に西本願寺が現在地に移転、1602年には東本願寺が今の場所に境内地を定めた。こうして、JR京都駅の北側には東西本願寺の巨大な堂宇が近接して存在することになった。

 浄土真宗の集まり「真宗教団連合」の構成メンバーであるなど、現在は交流関係のある二つの「本願寺」だが、この自衛消防隊訓練大会だけは別だ。

 小型動力ポンプ操法は、持ち運びできるポンプを使用する。4人のメンバーがポンプで防火水槽の水を吸い上げ、ホースで約60メートル先の的に向かって放水するのだ。元気の良さやチームワークなどをほかの自衛消防隊や消防署員が審査し、優劣を決める。

 近年の対戦成績を見ると、2012年以降、西本願寺が7連勝している。東本願寺の今年の隊長、藤原了基さん(26)は15年から東西本願寺対決に参加しているが、いまだ勝利を味わっていない。「今年はまじめなメンバーばかり。少ない時間を目いっぱい使って練習に励んでいる。当日はやるべきことをやるだけだ」と雪辱に力を込める。

 迎え撃つ西本願寺の隊長は大熊亮道さん(28)。隊長は初めてだが、過去2回に小型動力ポンプ隊に参加し、最優秀賞の獲得に貢献した。しかも、5年前に地元の北九州市で火災の中から男性を救助し、表彰された経歴を持つ「猛者」だ。大熊さんは「東本願寺は意識していない」と余裕を見せる。

 決戦は9月6日午後1時から西本願寺境内で、関係者のみで行われる。

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